彼女がいる世界1


初めの内は布団の上で身を起こすのも辛そうにしていた半兵衛だが、随分と快復してきたようだ。

続けて服用している薬が効いてきたのか、毎日の充分な睡眠と栄養のある食事で栄養状態がよくなってきたお陰か──たぶん両方だろう。

診察にきた老医師からも少しなら外を散歩しても構わないと許可が出たので、外に出てみたいという半兵衛の申し出を天音は快諾した。

「それなら半兵衛さんを見つけた場所まで行ってみますか?うちの裏山なのですぐ近くなんです」

「そうだね…お願いするよ」




半兵衛を見つけた小さな神社がある裏山までは本当にすぐそこまでの短い道行きであるため、半兵衛は病衣代わりに着せていた浴衣の上に羽織りを羽織らせた恰好で、天音も室内着のままで玄関を出た。
これが都会の街中であったならばそうはいかなかっただろうが、どうせ出くわすとしても子供の頃から顔馴染みの近所のお年寄りの面々だ。

緩い坂道になっている家の私道を下り、出てすぐの道路を右手に折れた所にある石段を上がっていく。

少しの間にすっかり身体がなまってしまったようだと苦笑する半兵衛の足元に注意を払いつつ、いつでも支えられるよう彼のすぐ傍らを天音は歩いていった。






あきゅろす。
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