夢の続き


左手で口を押さえて半兵衛が咳き込む。
布団に入って身体が暖まってきたせいで咳がぶり返したようだ。

「ちょっと失礼します」

答えを待たずに彼の胸に耳を寄せる。
左側の胸から微かにピチピチという異音が聞こえてきた。

「身体の左側を上にして横になってみて下さい。たぶんそのほうが楽になると思います」

言いながら、半兵衛の身体を腕で支えて横向ける。
態勢が変わって楽になったのか、半兵衛は大きく息をついた。
幾分か表情が和らいだように見える。

初対面の時ほど酷いものではなかったが、見ていて辛そうだということに変わりはない。

背を丸めるようにして苦しげに咳き込んでいる半兵衛の背中を天音は優しくさすった。
肩胛骨や背骨の感触が伝わってくる背中は硬く、熱があるせいか温かい。

「夢を…叶えた、後……」

「そうです」

天音は力強く頷いた。

「夢を叶えて天下を取った後こそ、秀吉さんには半兵衛さんの力が必要になるはずです」

「考えたこともなかったよ……いや、考えないようにしていたと言うべきかな…」

力なく笑った半兵衛の口元と左手を濡れタオルで丁寧に拭う。
タオルを持つ手に当たった呼気が熱い。

「もう諦めなくて良いんですよ。秀吉さんと一緒に夢の続きを歩んでいけるんです」

「…そうか……そうだね…」

安心したように半兵衛の瞳が閉じられる。

呼吸が穏やかになってきたと思っていたら、彼はいつの間にか眠っていた。






あきゅろす。
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