キッチンご案内3
「お茶はここにしまってありますので好きな時に使って下さい」
天音は戸棚から茶筒を取り出して蓋を開くと、蓋の部分に茶葉を少し出して二人に渡した。
佐助と小十郎が茶葉をつまんで匂いと味を確かめているのを見ながら急須を取り出して茶の用意を始める。
「お茶以外にも飲み物はありますけど、とりあえず今はお茶にしますね」
「ああ」
「この厨にある物はいつでも好きな時に何でも触ったり味見したりして確認して頂いて構いません。ただ、中には調理の時に味付けに使うもので辛かったり変な味がする物があるので気をつけて下さい」
「変な味って?」
「今は異国の調味料もたくさん入ってきているんです。日本のお醤油なんかに比べると、刺激が強くて味も馴染みがない物が多いと思うので、慣れてないとびっくりすると思います」
ふうんと鼻を鳴らした佐助は調味料が並ぶ棚を興味深そうに眺めている。
ワサビやカラシくらいならともかく、タバスコなんかはヤバそうだ。
「あと、湯飲みはこっちの棚に入っています。綺麗にしてからしまってありますけど、一度洗って──」
「いや、いいよ」
ふと気付くと、佐助と小十郎が僅かに苦笑して天音を見ていた。
「天音ちゃん、毒見させるために俺様達を連れてきたんでしょ」
「すまん、気を遣わせたな」
「いえいえ」
天音も困ったように笑った。
「初めての知らない場所で出された物なんて警戒して当然ですよ。佐助さんと小十郎さんは、政宗さんや幸村さんを守らなきゃいけないのでしょう。立場もあると思いますし、気が済むようにして貰って構いませんから」
あ、でも、と続けた天音に二人は何事かと僅かに表情を引き締めた。
「冷蔵庫にある白い包装紙に入ったものは半兵衛さんのプリンなので、味見は勘弁してあげて下さい」
「あはー、了解」
佐助は笑って請け合い、小十郎は生真面目に頷いて了承した。
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