武将がきました


半兵衛を傷つける意図を持って投げつけられたのだと瞬時に理解すると同時に、頭がカッと燃え上がった気がした。
咄嗟にすぐ側にあったホースをひっ掴み、思いきり水道を捻る。

ホースから勢いよく吹き出した水は迷彩服の男の顔面に直撃した。

「ぶわっ!?」

「な、なんだッ!?」

続いてもう一人の男にも。
広範囲に水をまく要領で左右に巻き散らし、それぞれの頭目がけて満遍なく水をかけてやる。

「頭は冷えた?」

水道を閉め、ホースをポイと放り出した天音は氷よりも冷たい声で告げた。

「ここは私の家です。勝手に入り込んで勝手に騒いで家主に襲いかかるのが貴方達の流儀ですか」

迷彩服の男は不服そうに抗議してこようとしたが、幸村が手で制して止めてくれた。

「よせ、佐助。彼女は敵ではない。某を助けてくれたお方だぞ」

「旦那……ああもう、分かりましたよ」

佐助と呼ばれた男は武器を下ろし、溜め息をついた。

「私の知っている事についてちゃんと説明しますから、草履を脱いで家に上がって下さい」

男達は素直にぞろぞろと縁側から部屋に上がっていく。

「面白い女よ」

緑色の装束の男に上から目線でのお褒めの言葉を賜った。
唇の端に笑みを引っかけて部屋に上がって行った彼は、少し離れた場所で傍観していたため水を被るのを免れたようだ。
頭が良いというか、ちゃっかりしているというか…。
最後のその男が家に上がったのを確認し、天音は改めて半兵衛に向き直った。

「半兵衛さん、大丈夫ですか?」

「ああ。何ともないよ」

半兵衛は笑っていた。
どうやら怪我はないようだ。
いつも通りの様子にほっとする。

「しかし驚いたな。まさか君があんな大胆な真似をするなんてね」

「う……言わないで下さい…」

自分でも命知らずな事をやらかしてしまったという感はある。
天音自身は武器を持っていない丸腰の女だったとは言え、放水を攻撃と見なされて危害を加えられていた可能性だってあるのだ。

「感心しているんだよ。君は勇気のある女性だ。咄嗟の判断力も行動力もある。──何よりも、僕を助けるために行動してくれたのが嬉しいよ」

半兵衛の言葉にはお世辞ではない熱っぽさがあった。

「いえ…あの…行きましょう、半兵衛さん。あの人達に説明しないと」

「そうだね」

半兵衛はふうと大きく溜め息をついた。

「やれやれ……面倒な事になったね」

天音もまったく同感だった。






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