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短編
狐の葬送4
温かいものに包まれているような感触、何より下半身に当たる硬いモノに違和感を覚え目を覚ました。

「……おいキツネ。起きてんだろ。チンコ当たってんぞ」

「当ててるんだ。なぜお前は朝勃ちもしないんだ」

起きて早々下ネタ。そんな不満そうに言われてもな。

「魔族になった頃から性欲ほとんどねーんだよ。頑張ってシコってりゃ勃つし出るが、そんな気持ち良くねえ上に疲れるから、それ以来やってねーな。夢精することもねーし」

なんとなく予想はしていたのだろう。そうか、と一言頷く蔵馬。

たぶん、魔族の15やそこらってのは、まだ性欲云々言える年じゃねーんだろうな。認めたくはないが、ガキなんだろう。そんなガキに手を出したこのキツネは。

「どうだショタコン。犯罪者の気分か?」

俺の問いに、蔵馬はフン、と鼻を鳴らした。

「とうに犯罪者だからな。今更一つや二つ罪が増えたところでどうってことはない」

「そーかい」

「気持ち良ければ勃つんだろう? お前ならば無理矢理オレにヤられるなどということもない。合意の上の行為だ」

さすが1000年以上生きてるヤツは図太いな。今後も攻める気満々か。

「俺が次いつそんな気分になんのかわかんねーが、そうなりゃ確かに合意だな」

面倒くせーのと疲れんのはイヤだな、と思う程度しか忌避の理由がないので、蔵馬が全てお膳立てしてくれるんならまあいいか、とか思っている自分がいる。

それが恋愛なのか、と言われるとなんか違うような気がする。

先は長い。未来がどうなるのかなんてわかる訳がない。だから、今はこれでいいじゃねーかな。

「ま、とりあえずそのチンコ、どうにかしてこいよ」

親指でクイっとトイレを示すと、蔵馬はしかたなさそうに息を吐くと、立ち上がった。







とまあ、昨夜の経緯を要らんとこは抜いて桑原に話した。

「なんだよ、ちゃんと言っといてくれよォ! てっきり本当に死んじまったのかと思っちまったじゃねーか!」

「すまなかったな、桑原くん。君はオレの葬式や通夜でしっかり泣いてくれそうだったから、終わるまでは知らない方がいいと思ったんだ」

「う、確かに」

既に滝のような涙を流した後なだけに、否定はできねーわな。

「できるだけ俯いてようぜ。俺もどういう顔したらいいのかわかんねーし」

「だな」

そんな俺たちの様子は、蔵馬のお袋さんには違和感をもたれそうだが。特に桑原は性格を把握される程度には、蔵馬母と会っているようだから。

「でもよォ、お前化けるとかして南野秀一続ければ良かったんじゃねーの? できんだろ?」

「できはするが」

言うなり見た目が南野秀一に変わる。

が。

「あ、うん、無理だな。すっげー威圧感と違和感だ」

「そうなんだ。これでは無理でしょう?」

「ナリは人間の南野秀一に見えるが、何つーのかな、小さなところに圧縮されているような何かが今にも爆発しそうで、何だか落ち着かない感じにさせるぜ」

俺にはそこまでの違和感は感じないが、桑原がそう言うのだからそうなんだろう。それはきっと、普通の人間にはその違和感は特に強まるのだろう。

当然、蔵馬はこの方法を既に試していたのだろう。その上で、人間を続けていくのは不可能だと判断したようだ。

「オレの葬式では、不審な行動はしないでくださいね、二人とも」

そう言って、銀色の妖狐に戻った。

そうするつもりではいるが、できっかな。そういう顔芸には向かない二人だということは自覚済みだ。

内心頭を抱えていると、見知った気配が俺のアパートにやって来るのを感じた。

階段を上り、俺の部屋の前に来ると、呼び鈴を鳴らす。同時にドアを借金取りのような勢いでドンドン叩いた。

以前、呼び鈴が壊れていたのをそのままにしていたせいでできた習慣だ。

「幽助! 起きなさい!」

「起きてるよ!」

ドアを開けると、これから出勤なのだろう、スーツ姿の蛍子がいた。

年相応に成長している蛍子とは、並べば今や兄弟のように見えてしまうだろう。

髪をハーフアップにし、化粧を施した姿は、テレビで見かけるような女優並みだとよく言われていた美少女の面影が残っている。

「チビ助いねーの?」

「保育園に置いてきたわよ。それより蔵馬くんのこと聞いた?」

「ああ」

「どういうことなの? あら、桑原くん。……蔵馬くん。やっぱりね。そうだと思ったのよ」

狭い室内なので、すぐに俺の後ろにいた桑原に気付き、その向こうにいた妖狐蔵馬にも気付いた。

あっさり納得したあたり、そういう予想を立ててとりあえず俺のところにきたのだろう。

「時間ないからまた詳しく事情を聞かせてね。あ、お通夜とお葬式には行かせてもらうわね。それじゃ」

出勤間際に都合を付けて来たのだろう。蛍子は蔵馬に向けてにっこり笑うと、慌ただしく去って行った。

「……さすが雪村」

もう雪村ではないが、桑原が蛍子に会う機会はそんなにないので、雪村呼びを続けている。

「そういやお前仕事は?」

「連絡もらってすぐ休みにした。仕事にならねーと思ってな」

あの状態じゃ、そりゃ仕事にゃならないだろうな。

「だから今日は休みだ! 雪菜さんに会いにいくぜー!」

じゃあな! と来た時とは別人のような元気さで出て行った。

「さて、今日は何すっかな。あ、喪服探すか」

「時間はある。なぁ、幽助」

後ろから抱き込んでくる蔵馬。攻めるねえ。

そこにまたしても見知った気配がやってくる。これは海藤か。

同じく気付いた蔵馬が、この後の展開を悟り溜息をついた。

「こりゃ、後何人俺んとこに事情聞きに来るんだろうな」

俺の部屋の呼び鈴が鳴った。

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あきゅろす。
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