短編
狐の葬送3
オレの上に乗り、思うがままオレを貪っていた幽助が、突然寝た。
おい。
オレのこの期待、昂った体をどうしてくれるんだ。
このまま襲ってやろうかという思いも過ぎりはしたが、彼は魔王だ。
例え意識がないとしても、いや、意識がないからこそ、無体な真似をしたら容赦なく叩きのめされる事だろう。
魔界深部のS級妖怪たちと頻繁に遊んで(戦って)いる幽助とは、残念ながら、それ程の実力差ができてしまっている。
もちろん、近いうちに追いつくつもりではいるが。
さて、問題はオレの上で眠りこけている酔っ払いだ。
オレもそれなりに酔ってはいるが、魔界の酒はかつてそれなりに慣らしていたのと、なるべく幽助に多めに注いだことで、オレの方が意識がはっきりしている。
さらに言うと、いくら酔ったとしても、オレは酔っていた時のことを忘れない。
当然、オレの上に乗って舌舐めずりをした、未だかつて見たことのない、少年の危うい艷やかな色気を忘れることはない。
あの表情を思い出すだけで、体の芯に火が灯る。
なんて卑怯。
普段の言動だって、オレを惹きつけてやまない。
自分の思うがままに言っているだけ、やっているだけ。それが信じられない程に、心を揺さぶるのだ。
本当に卑怯だ。
もうオレには人間の身体(南野秀一)という優しい枷はない。
これからは同じ時を生きられるというアドバンテージがある。
そう、人間の彼女には持てなかった優位点。
これからは、オレが幽助の隣を得る。
今回、酔っていたとはいえ、オレに対する拒絶はなかった。それどころか、期待すら抱けた。
「……今日はこれで許してやる」
先程の滴るような色気などどこにも見えない、あどけない寝顔。その少し開いた唇にそっと口付けた。
細身の体を抱き込み、心地よい眠りについた。
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