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魔王の壁越え

 部屋を出ると、ゴンたちとメルアドや名刺交換をしていたポックルやハンゾーがサァッと逃げていった。俺ではなく、俺の両隣にいる変態と宇宙人が怖かったんだろう。そう信じてる。
 俺たちに気付いたゴンは、イルミの正面に来て言った。
「キルアのいるところを教えて」
「聞いてどうする?」
「友達に会いに行くのに理由はいらないだろ」
 ゴンの主張に、イルミは思ったより簡単に教えた。
「ククルーマウンテン。その頂上にオレたちは住んでいる」
 驚いた。おめーンち、ちゃんとこの星にあったのか。けど山の頂上ならなるほど、宇宙に近いもんな。納得だ。
「殺し屋がそんなに簡単に自分の住み処を教えちゃっていいのかい?」
 隣に立つヒソカが面白そうに突っ込んだ。
「構わない。地元じゃ有名だしね。それに、家に着くのは無理だろうし」
 宇宙船使えってか。
 イルミの言葉に、ゴンが噛み付いた。
「家に着くのが無理ってどういうことだ!」
「ユースケ、オレこの後仕事なんだ」
「お前、人の話を聞けよ!」
 話の途中で急に俺に話し掛けだしたイルミにゴンが怒る。違うぜゴン。こいつは話を聞いてないんじゃない。自分の話を優先してるだけなんだ。
「イルミ、まずゴンに答えてやれや」
「だいたい一ヶ月くらいで戻れるから、家で待っててくれるだろ」
「何でてめーを待たなきゃなんねーんだよ。つか、ゴンを見ろ」
「さっき父さんたちには連絡しといたから大丈夫だよ」
「どこにも大丈夫の要素が見出だせねェ。何の話だ」
 繰り出されるトマトボールに嫌な予感しか感じない。苛立ちを募らせたゴンが声を上げかけたとき。
「どうして家につけないか、行けばわかる。ユースケが家にいないと準備できないだろ。オレとユースケの結婚式」
 空気が凍った。
 思考が凍ったまま、口だけ解凍したのはレオリオだった。
「おおおお、お、お、こけっ、け、け」
「落ち着けレオリオ、結婚式だ。それではニワトリだぞ。国によって鳴き声は違うのだが、コケコッコーと鳴くのはジャポン式らしい」
 いや、お前も落ち着けクラピカ。
「え、おめでとうごさいま、す? あれ、でもユースケはヒソカと? え、じゃユースケはキルアのお兄さん?」
 大混乱だなゴン。つーかまだヒソカのことで誤解してやがるのかよ。
 これだけ周りが混乱してくれると、逆に冷静になれるもので。よし、ここは一発、言ってやるぜ。
「はっきり言うがな、俺ァおめーと結婚するつもりはかけらも」
「じゃ、一ヶ月後に」
 ない、と言う前に艶のある黒い長髪をなびかせ、宇宙人は立ち去った。ああ。急いでたのはわかったとも。だが。
「話を聞けッ!!」
 俺の心からの叫びを、横にいたヒソカだけが爆笑する。八つ当たりでヒソカを蹴り飛ばしたら悦びやがった。
 俺ァ魔王のはず。なのに、なんでこうも思い通りにならねーんだ!


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あきゅろす。
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