魔王の壁越え 5 部屋を出ると、ゴンたちとメルアドや名刺交換をしていたポックルやハンゾーがサァッと逃げていった。俺ではなく、俺の両隣にいる変態と宇宙人が怖かったんだろう。そう信じてる。 俺たちに気付いたゴンは、イルミの正面に来て言った。 「キルアのいるところを教えて」 「聞いてどうする?」 「友達に会いに行くのに理由はいらないだろ」 ゴンの主張に、イルミは思ったより簡単に教えた。 「ククルーマウンテン。その頂上にオレたちは住んでいる」 驚いた。おめーンち、ちゃんとこの星にあったのか。けど山の頂上ならなるほど、宇宙に近いもんな。納得だ。 「殺し屋がそんなに簡単に自分の住み処を教えちゃっていいのかい?」 隣に立つヒソカが面白そうに突っ込んだ。 「構わない。地元じゃ有名だしね。それに、家に着くのは無理だろうし」 宇宙船使えってか。 イルミの言葉に、ゴンが噛み付いた。 「家に着くのが無理ってどういうことだ!」 「ユースケ、オレこの後仕事なんだ」 「お前、人の話を聞けよ!」 話の途中で急に俺に話し掛けだしたイルミにゴンが怒る。違うぜゴン。こいつは話を聞いてないんじゃない。自分の話を優先してるだけなんだ。 「イルミ、まずゴンに答えてやれや」 「だいたい一ヶ月くらいで戻れるから、家で待っててくれるだろ」 「何でてめーを待たなきゃなんねーんだよ。つか、ゴンを見ろ」 「さっき父さんたちには連絡しといたから大丈夫だよ」 「どこにも大丈夫の要素が見出だせねェ。何の話だ」 繰り出されるトマトボールに嫌な予感しか感じない。苛立ちを募らせたゴンが声を上げかけたとき。 「どうして家につけないか、行けばわかる。ユースケが家にいないと準備できないだろ。オレとユースケの結婚式」 空気が凍った。 思考が凍ったまま、口だけ解凍したのはレオリオだった。 「おおおお、お、お、こけっ、け、け」 「落ち着けレオリオ、結婚式だ。それではニワトリだぞ。国によって鳴き声は違うのだが、コケコッコーと鳴くのはジャポン式らしい」 いや、お前も落ち着けクラピカ。 「え、おめでとうごさいま、す? あれ、でもユースケはヒソカと? え、じゃユースケはキルアのお兄さん?」 大混乱だなゴン。つーかまだヒソカのことで誤解してやがるのかよ。 これだけ周りが混乱してくれると、逆に冷静になれるもので。よし、ここは一発、言ってやるぜ。 「はっきり言うがな、俺ァおめーと結婚するつもりはかけらも」 「じゃ、一ヶ月後に」 ない、と言う前に艶のある黒い長髪をなびかせ、宇宙人は立ち去った。ああ。急いでたのはわかったとも。だが。 「話を聞けッ!!」 俺の心からの叫びを、横にいたヒソカだけが爆笑する。八つ当たりでヒソカを蹴り飛ばしたら悦びやがった。 俺ァ魔王のはず。なのに、なんでこうも思い通りにならねーんだ! [*前へ][次へ#] [戻る] |