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魔王の壁越え

 ずいぶんゆっくりだなぁ。大アクビが止まらん。
 サトツさんの霊気は覚えたから、寝ててもついていける。走っちゃいるが、この速さなら散歩みてぇなもんだ。
 何十回目かのアクビをしたとき、髪の毛を立てた坊主が俺に声をかけてきた。
「ねぇ、君、名前何て言うの? オレはゴン!」
 透き通った純粋な目をした坊主、ゴンが笑顔で名前を聞いてきた。見た目、12か13かってところか。どうも俺が同じくらいの年だと思ってる口ぶりだが、怒る気にはなんなかった。たぶん、こういうヤツ、弟にいたら楽しそうだ、と思ったからだろう。
「俺は幽助だ。浦飯幽助」
「ウラメシくんっていうの? オレはゴン・フリークスだよ。ゴンって呼んでね」
 にっこり無邪気に笑うゴン。うむ。まだ粗削りだが、こん中じゃピカイチの霊力じゃんか。
「あ? ゴンが名前か。それでいくと、俺は幽助・浦飯だな。幽助でいいぜ」
「ユースケだね! よろしく、ユースケ!」
「おう!」
 にぱっと笑いを交わす。すると突然、ゴンが後ろに引っ張られていった。そこには酷く焦った様子のグラサン男と、金髪の少年がいた。どうやらゴンの知り合いらしい。
 グラサン男が声を潜めて、ゴンの耳に怒鳴り付けた。
「ブァッカヤローッ! お前ってヤツァ何を突然危ねぇヤツに話し掛けてんだよッ!」
「そうだぞゴン! 見るからに危険で、しかも寝ながらヒソカのトランプをいなすような輩なのだぞ! 話し掛けた瞬間に殺される可能性だってあるというのに!」
 はっはっはっ!
 こちとら魔族だぜ。耳の良さ、ハンパねぇんだぜ。声ひそめても丸聞こえだっつーの!
 まぁな。上半身裸だわ、髪の毛ブキミなくれぇ長いわ、不審者と言われても反論はできねぇ。いや、地味に腹立たしいが、ここで霊丸ぶちかますほど大人気なくはないつもりだ。堪える俺。ゴンが反論する。
「えー。でもユースケいい人だよ」
 ゴン。いい子だ。
「サンキュ、ゴン」
 ニッと笑って言うと、グラサン男と金髪少年が焦りだす。それにも流し目を送る。全部聞こえてんだよ、ターコ。
 いい人っつーか人間じゃねぇし、どっちかってーと悪人寄りだけどな。ははは。


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あきゅろす。
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