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魔王の壁越え

「うん! それ、楽しそう!」
「こんなエグイ試験を遊びと言い切るあたり、ユースケっておかしいよな」
 たちまち笑顔になるゴンと、呆れたそぶりを見せながら満更じゃないキルア。
「オレのターゲットはユースケでもキルアでもないよ」
「オレも違うぜ」
「ね、キルア。せーの、で見せっこしようよ」
 俺の目の前でゴンが提案し、キルアも同意する。その場で、誰に見えるかもわからないのに見せようとするゴンを止め、キルアは俺とゴンの肩を掴んで円陣を組む。実際、周囲の受験生はこちらを注目し、ゴンたちのカードを見ようとしていたから、キルアの判断は正しい。マジでなぜコレがアレの弟なのか。
「ユースケは知ってるから出さなくていいからね」
「おう」
「せーの!」
 俺たちの胸の前に出されたのは、キルアの手にある199番のカードと、ゴンの手にある44番のカードだった。
 199番はわかんねーけど、44番はあの変態、もといヒソカだな。
 無言になる。
「……ゴン、お前、クジ運ないな」
「やっぱり? オレもそう思った」
 キルアが嘆息混じりに言うと、ゴンも頷く。
「キルアのそれはどいつなんだ?」
「わからないね」
「ユースケもゴンも知らないか。いいよもう、適当に3人狩るから」
 諦めたらしい。ま、キルアならその方が早そうだな。受験生の中じゃ、キルアの実力はかなり上位だろうから。
 そこでリッポーに俺の出発を告げられる。
「うし。じゃ、俺行くわ」
 円陣を解いて二人から離れると、口々に激励をくれた。礼を告げると、ゴンに視線を向ける。
「ゴン、頑張れよ」
 頷くゴン。その体は小刻みに揺れていた。ゴンのターゲットは変態で殺人快楽者のヒソカだ。普通ならその震えを恐怖故と思う。
 だが、俺は一次試験で、ヒソカの殺気にあてられ、歓喜に震えるゴンの意外な一面を見ている。勝てない。けど戦いたい。つまり、ゴンのその震えは武者震い。
 頑張れ。
 二人に見送られ、俺は出発した。

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