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魔王の壁越え

 俺たちがいた小部屋の扉には、俺には読めない字で何かが書かれていた。「何て書いてあんだ?」とイルミに聞いておいたから、その内気付いたら教えてくれるだろう。かっ飛ばし専門相手のキャッチャーに大分慣れてきたぞ。
 イルミが扉を開け、小部屋から出る。そこには長い廊下があった。しかも至るところに罠がしこたま仕掛けられている。とりあえず、片っ端から作動させてみた。
 コンクリートの床の一部を踏んでみたら矢が降ってきた。俺に当たるまでに、背の高いイルミが全部針で打ち落とした。
 膝の高さで壁から壁に張られていた糸を足で切ってみたら、両脇から槍が出てきた。イルミは針で、俺は手刀で落とした。
 明らかに落とし穴な床に乗ってみた。落ちたら剣山の上で、そこに刺さることなく二人で立ち、跳んで出た。
 ベタすぎてマジ笑えるよ。金だらいとか。
「ねぇユースケ。どうしてわざと一つ残らず罠にかかるの? 趣味なの?」
「ちげーし。何もない道をヤロウ二人で手ェつないでただ歩くとか冗談じゃねーよ。そんくらいならトラップにかかった方がおもしれーじゃねーか」
「ふーん。オレもユースケと二人でいるのはおもしろいよ」
 待て。ボク「も」って一体誰と同じつもりでいるんだこの不思議ちゃんは。こんな不思議ちゃんに不思議を追求したところで謎は深まるばかりに決まってる。ここは流すのが一番だ。
 だが、かっ飛ばし専門相手のキャッチボールにおいて、流すのも危険だと知る。
「ユースケとオレって相性いいね」
「あ? そうか?」
「うん。じゃあハンター試験終わったらうちだね」
「……あ?」
「父さんに紹介するね。オレの生涯のパートナーだって」
「しょうがいのぱあとなあだぁ!? ……おいこら待て!」
「あ、そうだ。この道なんだけど、二人で協力して、手錠で繋がったままお互い死なずにゴールしたら合格だってさ。オレたちなら楽勝だよね」
 ここでこの道の説明きたか!! しかもここまで来れば、なんとなくそういう流れなんだろうなってわかってたっつーの!
「……なんつーイキモノだ」
「ユースケって変わってるよね」
 てめぇにだきゃあ言われたかねーよ。
 引きずられるように、俺はイルミとその道を進んだ。

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あきゅろす。
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