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魔王の壁越え

 再試験はネテロ会長が乗ってきた飛行船でマフタツ山に移動し、断崖絶壁の谷で行われた。
 再試験の内容は、クモワシの卵でゆで卵を作ること。
 谷の端にメンチが靴を脱いで立つ。そのまま谷底に跳んだ。谷間にはクモワシが糸で巣を作っていて、糸を伝い、卵を一つ取ると、崖をはい上がり、メンチは帰ってきた。
「糸に引っ掛からずに谷底まで落ちても、川が流れてるから死にはしないわ。ただし、流れが早過ぎるから数キロ先までノンストップで流されるけどね。勇気がある奴だけいきなさい」
 あまりの高さに怖じけづく者も少なくなかったが、ゴンたちは「こういうのを待ってたんだよね!」と嬉々として次々に谷に跳んだ。
 それを見ていたら、「1番、あんたは?」と聞かれ、まだ跳んでなかったと気付いた。
 すぐに谷に跳んだ。クモワシの卵の側にピンポイントで着地し、卵を取り、糸が戻る反動で上まで帰る。ほれ、と卵をさっきと同じ場所にいたメンチに見せる。
「取ってきたぞ」
「あんたいつの間に……」
「あ? 今行ってきたじゃねーか」
 俺をまじまじと見つめ、溜め息をついた。
「あんたがいろいろ規格外だってのはよぉーっくわかったわ」
 まぁ人間じゃねーからな。
 続々と戻ってきた受験生たちと一緒に、大鍋の中に卵を入れて茹でる。出来上がったクモワシのゆで卵は、鶏卵なんて目じゃないくらい美味かった。これで卵かけご飯が食べてーな。

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