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魔王の壁越え
3
「まったく意味がわからん。不思議の国のアリスなのか?」

「いや。答えはあれだ」

 クラピカが指を向けたのは、商店街横の廃墟だった。

「答えわかったのか!?」

「簡単なことだ」

 折り畳んでいた市内地図を開き、クラピカはペンで丸を付けていく。

「「当たり」の店に印を付けると、このようになる」

「ぉお」

 空白の住所を先端に、矢印が浮かび上がった。その矢印の向く方が廃墟だ。

 地図で試す前にクラピカには答えがわかっていた。ってこた、買ったばかりの市内地図を暗記していたってことか。得た情報と地図を結び付けるセンスといい、頭イイな。

「しかしこりゃまた大雑把な指定だなァ」

「だが、何らかのヒントがあるはず」

 廃墟に向かって歩き出すクラピカは実に頼もしい。あっちの世界の蔵馬を彷彿とさせる。

 そういや、こういう頭使うときは、いっつもアイツに頼ってたっけなァ。アイツ、どうしてンだろうな。

 つーか俺、突然消えたんだが、奴らぜってー好き勝手言ってンだろうな。ちゃんと探してくれてんのかね。その内帰ってくるだろとか放置されてる気配がプンプンするんだが。

 溜め息混じりに足を進め、廃墟の前まで来た。

 廃墟と商店街はそこそこ距離がある。

 廃墟の中には、人の気配がいくつもあった。その中に、綺麗な纏をしているヤツが1つある。それが仲介屋だろう。

 クラピカに教えようかと思ったのだができなかった。念について説明できないのに、どう伝えんだっつー話だよな。

 だがクラピカは、少し廃墟を見て回ると、迷いなく念能力者の元へ進んでいく。

 ついに、念能力者がいると思しきビルにたどり着いてしまった。

「なァ。なんでここって思うんだ?」

「見ればわかる。この建物だけ不自然だからな」

 見てみた。窓ガラスは薄汚れて割れている。 壁は剥がれ、手摺りやら窓枠やらの金属部分は、完全に錆びていた。だが、他の廃墟と外観は何ら違いはない。

「どこが不自然なんだ?」

「蜘蛛の網だよ」

 クラピカの指差した所には錆びてボロボロのドアがあり、その角に蜘蛛が巣を作っていた。

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