魔王の壁越え 9 集団の脇をすり抜け、俺とゴンとキルアは、再びサトツさんの真後ろまで来ていた。次第に霧が深くなる。 集団の後ろの方にいる鈴木もどき、もといヒソカっつー奴が殺気を撒き散らし始めた。こりゃ危ねーな。そのことに、キルアも気付いたらしい。 「前に来て正解だぜ。あのヒソカって奴、この霧に乗じて相当ヤる気だ」 キョトンとするゴンに、キルアは得意げに言う。 「なんでわかるかって? それは俺があいつと同じ種類の人間だからだよ」 まぁ確かにキルアとヒソカは同じ霊気の色をしちゃいるが、きっとそういう意味じゃないんだろう。 「同じ種類? におい全然違うよ」 「そういう意味じゃねーよ!」 かぐな、犬かよ! と突っ込むキルアに首を傾げるゴン。くく。ゴンはおもしれーな。 「とにかく、前に来た方がいいんだね。レオリオー、クラピカー! もっと前に来た方がいいってさー!」 後ろに向かってゴンが叫ぶ。 「行けるもんなら行っとるわ!」 後ろを走る人混みの中から、すぐにレオリオの怒鳴り声が返ってくる。そこをなんとかー、と応じるゴンに爆笑だ。 「ったく、緊張感のない奴らだな!」 「本当だな」 「お前もだよ!」 相槌打ったら、俺までキルアに呆れ混じりに突っ込まれた。まぁ緊張感がないのは事実だが。 そうこうしている内に、奴が動いた。 ウワッ あぁぁッ 集団の後方で、悲鳴が上がる。十数人の霊気が一瞬で消えた。殺ったのはヒソカだ。 「どうしたんだろう」 不安げなゴンに、キルアが鼻で笑って冷たく応える。 「ヒソカが殺し始めたんだろ。さっき一緒にいた奴らが心配か? なら悲鳴が聞こえないことを祈っときな」 ゴンは背後を気にして、後ろ向きで走る。確かに心配だ。ヒソカの霊気は、この集団の中じゃ一番洗練されていて強い。まだ未熟なレオリオやクラピカが無事に済むとは思えねぇ。 不安は的中する。 [*前へ][次へ#] [戻る] |