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魔王の壁越え

 集団の脇をすり抜け、俺とゴンとキルアは、再びサトツさんの真後ろまで来ていた。次第に霧が深くなる。
 集団の後ろの方にいる鈴木もどき、もといヒソカっつー奴が殺気を撒き散らし始めた。こりゃ危ねーな。そのことに、キルアも気付いたらしい。
「前に来て正解だぜ。あのヒソカって奴、この霧に乗じて相当ヤる気だ」
 キョトンとするゴンに、キルアは得意げに言う。
「なんでわかるかって? それは俺があいつと同じ種類の人間だからだよ」
 まぁ確かにキルアとヒソカは同じ霊気の色をしちゃいるが、きっとそういう意味じゃないんだろう。
「同じ種類? におい全然違うよ」
「そういう意味じゃねーよ!」
 かぐな、犬かよ! と突っ込むキルアに首を傾げるゴン。くく。ゴンはおもしれーな。
「とにかく、前に来た方がいいんだね。レオリオー、クラピカー! もっと前に来た方がいいってさー!」
 後ろに向かってゴンが叫ぶ。
「行けるもんなら行っとるわ!」
 後ろを走る人混みの中から、すぐにレオリオの怒鳴り声が返ってくる。そこをなんとかー、と応じるゴンに爆笑だ。
「ったく、緊張感のない奴らだな!」
「本当だな」
「お前もだよ!」
 相槌打ったら、俺までキルアに呆れ混じりに突っ込まれた。まぁ緊張感がないのは事実だが。
 そうこうしている内に、奴が動いた。
 ウワッ
 あぁぁッ
 集団の後方で、悲鳴が上がる。十数人の霊気が一瞬で消えた。殺ったのはヒソカだ。
「どうしたんだろう」
 不安げなゴンに、キルアが鼻で笑って冷たく応える。
「ヒソカが殺し始めたんだろ。さっき一緒にいた奴らが心配か? なら悲鳴が聞こえないことを祈っときな」
 ゴンは背後を気にして、後ろ向きで走る。確かに心配だ。ヒソカの霊気は、この集団の中じゃ一番洗練されていて強い。まだ未熟なレオリオやクラピカが無事に済むとは思えねぇ。

 不安は的中する。


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あきゅろす。
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