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Open New Door
八坂周という男
◇王道学園モノ、鬼畜副会長×美人中身残念◇




 朝、学校に着いて早々のこと。
 一番近い、下駄箱に近く教室からは遠いため、あんまり人の来ないトイレを目差した。
 決壊寸前、超ギリギリ、ていうかチョビ出てるんじゃねってときに囲まれた。まさにトイレに駆け込む瞬間だった。
「八坂周(やさかあまね)だね。ちょっとついてきてもらお」
「ムリ! たいていルールは守るこの俺がなんで廊下走ってトイレに駆け込もうとしてると思ってんの? ムリ。出そう。そこまで茶色いの見えてる。あぁぁぁぁ出る出ちゃう出ちゃったかも」
「きたなっ!」
「描写がリアルでキモい!」
「何なの!? 出ちゃったの!?」
「わかったよ、いいから早くトイレ行けよ!」
 その場で小刻みに足踏みし、脂汗流して、尻と腹を押さえて訴えたら、あの暴虐なるチワワ軍団もとい、親衛隊たちが道を譲ってくれた。意外に親切かもしれない。
「ありがとうありがとう! 全身全霊でビチャビチャ出してくるよ!」
「下痢かよ!」
「想像しちゃったじゃないか!」
「やだもう汚い!」
 メンゴと謝罪し、俺は無事、ちょっとパンツに茶色いシミができる程度で便座に着くことができた。
 ここ、南梅山(なんばいさん)高校は山の上にある全寮制のお坊ちゃま学校で、便所までお坊ちゃま仕様をしている。便座に近寄ればセンサーで蓋が上がり、座れば尻を温めてくれる。
 以前通っていた公立の高校と比べたら、いや、あっちの扉のしまりすら怪しい落書きだらけの和式便所と比べるのもおこがましいか。
 とにかく腹が痛い。
 脂汗をかきつつ、爆音をたてて中身を出し切り、腹痛が治まったのは10分後のこと。
 トイレのドアを開けると、可哀相な子を見る眼差しを向ける5人の親衛隊たちがいた。トイレの窓は全開になり、換気扇まで回して待っていてくれたらしい。なんて優しい。
 俺は、にっこり笑って声をかけた。
「どうもどうも、お待たせしました! いやぁ消費期限が切れた牛乳はやっぱだめなんだね! 消費期限が切れたらチーズになるんだとばかり思ってたよ。なんかまた来そうだから、話ならここで聞くよ?」
 その言葉に、親衛隊の皆さんは更に微妙な顔になり、顔を見合わせて相談を始めた。
「……どうする?」
「制裁途中に下痢とか何それ、ギャグなの?」
「そんな締まりのない制裁やだ」
「あはは。下痢だけにシモが締まらない。君うまいね!」
「お前が言うなッ!」 親衛隊の少年たちの相談がおもしろくて口を挟んだら怒られた。

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