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disagreeable!



自然と笑みが零れてしまう。
すると目の前の男は、お?という少し不思議そうな顔になる。
「・・・?」
「なんだお前、そんな顔もできんだな」
「っ!」
「あっれ〜?」
「う、うるさいっ」
次期大総統のことで最近笑ったり表情を表すなんてことが少なくなったと思う。
それなのに思わず緩んでしまって、それを指摘されて顔を真っ赤にしてしまった。
真っ赤なまま怒鳴れば、ぷっ、と息を噴出して腹を抱えて笑い出してしまった軍人に驚いた。
軍人といえば堅物の人間しか見たことが無かった。
中には少しはちゃんと表情を持った楽しい軍人もいた。
だが、それでも自分の『次期大総統』というものは重かった。
だから、こんな大声で笑ってくれる軍人がいて、少し嬉しいのだ。
だが、それでもそろそろこちらも限界に近づいてきた。
ムカつくので鳩尾に一発ブチかましておいた。
「ぐほぉっ」
「ふん」
「ごほっごほっ!なっなにするんだよっ!!」
「笑いすぎだ」
「そ、それにしても痛い・・・」
「・・・ふん」
「あ、やべ、そろそろ戻んねーと。じゃぁな」
「あっ」
「ん?」
「あっ、や・・・ごめ・・・」
きっと市内巡回の途中だったのだろう。
仕事場に戻ろうとする軍人の軍服の袖を思わず掴む。
何故自分がこんなことをしたのかわからなかった。だが、掴んでいた手を離す。
すると頭にその大きな手をぽんと乗せて、
「お前も来るか?」
「・・・え?」
「巡回が終わったらもう仕事終わりなんだ。だからお前がよければメシにでも行かないかなって」
「・・・いいのか・・・?」
「おう!」
こくりと頷く。
その軍人はまた人懐っこい笑みで、そか。と言った。
「あ、そう言えばまだ名前聞いてなかったな。俺、ジャン・ハボック。お前は?」
「・・・エドワード・・・」
「エドワード?」
「エド、でいい」
「そか、俺はジャンでいいぞー」
「ジャン・・・?」
「おう!」
「・・・うん・・・、・・・ジャン」
「・・・・・・」
「・・・?」
なんだこの妙な沈黙。何かおかしなことを言ってしまったのだろうか。
「・・・お前・・・」
ビクッ、と思わず体が跳ねる。
「可愛いなぁぁぁ!」
ムギュムギュゥと抱きしめられる。
苦しい、離せ!と言いながら、煙草の匂いのするその腕の中が温かくて少し嬉しかった。


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