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disagreeable!



荒い息遣いが路地裏に響く。
軽いゴム製でできた靴と、それなりに鍛え上げられた技術で足音は無意識に消す。
追っ手はこない。撒けたようだ。
すると、目の前に路地の開きが見えてきた。
そして大通りに出ようと足を踏み出した瞬間、
「っな!」
「うわっ!」
ドンッと大きな音がして硬質な地面に尻餅を付いてしまう。相手は倒れていないようだ。・・・なんかムカつく・・・。
「いつつ・・・」
「お、おい、大丈夫か?」
視線を下に向けて座ったままお尻をさする。
ふと視界が少し影って手を差し出されていることがわかる。
「あ、ああ・・・ごめん、ぶつかっちゃって・・・っ!」
「いや、いいけど気をつけろよ・・・ん?」
差し出された手を取って立ち上がろうと手を差し出した人間を見て体が強張る。
軍人だ・・・!
「どうした?」
「あっ・・・い、いや・・・」
手を取って立ち上がる。
つい先週、次期大総統の記事が大々的に取り上げられた。
元々大総統になる気はこれっぽっちもなく、そう言っていたのはブラットレイだけだった。
だが、当時まだ年齢の幼かった自分を表には出すことはせず、ただただ自分の力を引き伸ばそうとした。
実際、体術や錬金術の能力は伸びた。
頭脳的のも含めて、ブラットレイ曰く基がいいから、だそうだ。
「ん?本当に大丈夫か?」
「あ?あ、ああ、ごめん」
「いや、いいけどよ」
青い軍服を見て、思わず過去に耽ってしまったようだ。
「・・・てか、見ない顔だな。どこから来たんだ?」
きっとこの髪と瞳のことを言っているのだろう。
この辺りは金髪は多くても、金の目と髪を両方持っている者は少なかった。
「あ・・・、いや・・・」
今必死でブラットレイの手から逃げているところだ。軍人に今身元を知られるわけにはいかない。
言い澱んでいると霞んだ金髪の男は、何かを察したかのように、
「ま、言いたくなければいいんだがな」
ニカッと人懐っこい笑みが緊張した心を少しだけ解してくれた気がする。


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あきゅろす。
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