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disagreeable!
20



さすがに1日経てば追っ手ぐらい来るだろうと思っていたものは来る気配がない。
それはもう清々しいほどに。
・・・どうしてだ?
あそこまで自分が大総統になることを頑なに願っていたあのブラットレイがまさかこの自分を追わないわけがない。
「・・・あれ?」
街を散策していれば人が絶え間なく流れるところから外れた道の脇に小さな女の子が一人泣きじゃくっていた。
「どうしたの?」
小走りでその女の子に近づいて声を掛ける。怖がらせないようにその子の身長に合わせてしゃがむ。
かなり泣いたのだろう。ひっくひっくとしか聞こえてこない。
宥めるように頭に掌を乗せてゆっくりとさすってあげる。
そうするとその女の子は少し安心したように涙で濡れた腕を目元からゆっくりと放す。
「どうしたの?」
「ぐすっ・・・ままが・・・いないの・・・」
「そうか。ここではぐれちゃったの?」
「・・・わかんない・・・」
女の子は小さな頭をゆるゆると振る。いつのまにかはぐれてしまっていたのだろう。
さて、どうしたものか。
この人ごみの中、この子の母親がこの小さな女の子を見つけることは難しい。
こんなにも小さい子をこの人ごみの中にいれて母親を探すのも憚られる。
「じゃあ軍人さんのところに行こうか」
「・・・ぐんじんさん・・・?」
「そうだよ、あそこならお母さんが来るかもしれないからね」
「・・・うん」
「じゃあ行こっか」
その小さな手を引いて、流れてくる人にこの小さな体がぶつからないようにして歩く。
少し歩けばすぐそこはハボックやロイがいるという東方司令部が見えてくる。
東方司令部の門のところに一人の憲兵が立っていた。
それに近づいて声を掛ける。
この女の子が迷子であってお母さんが捜してないか訊く。
すると憲兵は通信機で司令部内にいる軍人と連絡を取ってくて、取り合えず中で待っていてくださいと言って中に入れられた。
できることならば軍には来たくなかったけど。
軍内の客室で待つこと10分、髪の毛をゆるく巻いた女性がこの部屋に駆け込んできた。
女の子はその女性の顔を見る途端、「お母さん!」と叫んでその女性の胸の中に抱き込まれた。
その後は女の子のお母さんだという女性が何度も何度もエドワードにお礼を言って司令部から離れて行った。
なんだか今日はいいことがありそうだなと、ぐーと背中を伸ばす。


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あきゅろす。
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