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世の中は確かに変わりつつある






「…ん…」

目を擦る弘毅の頭を、髪を梳くように撫でた。

「おはよぅ、弘毅ぃ」
「っ、は、じめ」

目覚めたら俺がいて吃驚したんだろう。目を見開いて固まってしまった。頬をつついて意識を戻させた。

「…お前がいるなんて珍しいな」

明日の天気予報は台風か?と冗談には聞こえない冗談を弘毅は言った。

「ちょぉっと気になる子が転入してきてさぁ」
「…河嶋夏輝、か」
「さすが風紀委員長。情報はバッチリですかぁ」

ふふ、弘毅も攻め要員なんだよね!とにやけていたら、弘毅の眉が不快そうに寄った。
今だソファに寝転ぶ弘毅の眉間をグリグリしてみる。

「どぉしたのぉ」
「河嶋夏輝には、生徒会が、特にあのクソ会長と腹黒副会長がゾッコンらしいが。…お前もなのか?」
「ゾッコンだよぉ(待ちに待った王道転校生君だもんね!)」

そう言ったら弘毅は悲しそうに顔を歪めた。

「弘毅は夏輝に会ったのぉ?」
「…名前……。…いや、まだだが」
「そっかぁ。会わないのぉ?」
「河嶋夏輝が問題を起こさなければな」

そりゃそうか。普通そんな好き好んで人に会いに行かないはな。…この学園でそれは通用しないけど。
てことは生徒会vs風紀委員→夏輝のイベントがないかもしれないってこと!?まぁ、そろそろ親衛隊動きそうだから会わないなんて不可能だけど。
それより気になるのは弘毅の表情。悲しげに歪められたその表情は昨日の一司を思い浮かばせる。
両頬を包んで、どうした?と尋ねてみたら、頬に触れていた左手を優しく掴まれた。

「?」
「どこにも行かないでくれ…」
「俺はここにいるよ?」

何故こんな悲しそうなのか。俺にはさっぱりわからない。

「今日、俺の部屋来ないか?」
「あー…、ごめん。今日は用事入ってるんだぁ」
「…夜通しでか」
「え、あー…、うん」

弘毅は俺の言う意味を悟ったと思う。だってさっきより…何て言うか、痛そう。そんな顔されたら俺まで苦しくなる。胸がぎゅうぅ、って。

「…不純な行為を続けるならば実力行使も厭わないつもりなんだがな…」

風紀委員長として学園内での不純行為を許せないのはわかるが、強姦等の犯罪紛いのことにしか普通風紀委員は手を出さない。
弘毅はもどかしそうに、ギュ、と目を瞑った。

「お前だけには……、」
「え、何、聞こえない…」

最後は、こんな至近距離でも聞こえないくらい小さく言われて聞き取れなかった。

「いや、何でもないよ」

弘毅はゆっくりと上体を起こした。流れる動作の中で眼鏡も掛けた。

「元、少し隈が出来ている。少し寝ていけ」

床にお尻を付けたままだったから、必然的に弘毅を見上げる体勢になる。
弘毅の言葉に甘えて、まだ温もりの残る、先程まで弘毅が眠っていたところに腰を下ろして、弘毅の膝に頭を預けた。

「ありがと…」
「ほら、もう寝ろ」

上を、弘毅を見上げるようにしていた俺の目の上に手のひらを被せて寝るように促してきた。訪れてくる睡魔に、身を委ねた。
それからすぐ、その形のよい唇から寝息が聞こえてくる。
日は傾いて、元に掛かる日差しは赤みを帯びていた。
その顔を愛しげに見つめながら、ぽつりと呟いた。

「お前にだけは嫌われたくないんだよ…っ」

腰を屈めて、無理な体勢に少し苦しかったが、その形のよい元の唇に、自分の唇を重ねた。

⊂(^ω^*)(#^ω^)⊃

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