世の中は確かに変わりつつある 4 10分ほど歩くと大きな白いお城が見えてくる。お城は何と10階まであって、さらに横幅もハンパない。端から端の教室まで普通に歩いて5分以上掛かる。計ったことはないけど。 お城の玄関口はゆうに3メートルも高さがあって、正直そんなにいらねぇよと思う。 下駄箱は唯一普通で、木製(檜)である。 「やばぁ、むちゃくちゃ懐かしー」 「去年の期末試験以来なのでは?」 「あー、そうかもぉ」 猫を被った俺と隊長モードの亜希斗と、そして田沼君の存在にその場にいた生徒たち全てが色めき立つ。何で菅原様が!?ってね。 後ろで静かについて来る田沼君は少し居心地悪そうで舌打ちなんかしちゃってチワワちゃん達がビクッとなってるよ。 自分の下駄箱を開ける。手のひらサイズの色とりどりの手紙が大量に滑り落ちて来た。 「…うわぁ…」 「元様が最後に来た時から溜まっているんだと思います」 溜まりすぎて奥の手紙とか圧縮されちゃって微動だにしないから。てか俺の上履きヘロヘロな上に何か下駄箱臭いっ!まるで朝の通勤ラッシュ時の電車のようだ。 「ンだぁ?手紙に香水とか色めき立ちやがって。ッチ」 「潰してやりましょうか」 …仲いいね、君たち。 「それはダメだよぉ。ちゃぁんと持って帰らなきゃぁ」 ペラペラの通学鞄からビニール袋を取り出して丁寧に詰め込む。今更丁寧にしてもあんま変わんないけど。 後ろの方で、そんなの拾うなオーラを感じる。勿論亜希斗と田沼君だ。 圧縮された手紙もちゃんと入れて、まだ5回も履いていないヘロヘロになった上履きを履く。 片手には大量の手紙の入ったビニール袋とか、不自然すぎて仕方ない。 玄関口から向かって左右の側面には3つ、計6つのエレベーターが設置されている。 右を南エレベーター、左を北エレベーターと、単純な名前が付いているが、南エレベーターに乗ると9階にある生徒会専用部屋に行け、北エレベーターに乗ると同じく9階の風紀委員専用部屋に行ける。まぁ、特別なカードキーがなきゃ行けないけど。 同じ階にはあるが、実際は互いの部屋の間はしっかりと壁で閉ざされていて、行き来出来る筈の扉は殆ど封鎖状態らしい。 どちらかのエレベーターを使うと、運良く生徒会や風紀委員の誰かと鉢合わせするらしく、そんなミジンコぐらいの小さな確率を求めてエレベーターに乗り込む生徒は多い。 まぁ、9、10階から来たり行ったりするエレベーターは他の階には止まらないんだけどね。 俺は北エレベーターの一番奥に乗り込む。やはり人は少ない。 2年生の階は3階にある。簡単に校舎の説明をするよ。 1階→玄関・校長室・来客専用 2階→1年教室 3階→2年教室 4階→3年教室 5階→職員室 6階→特別教養 7階→〃 8階→図書室 9階→生徒会・風紀委員 10階→理事長 ってなっていて、元々の敷地が馬鹿でかいから全てが広い。10階だけは小さく設計されてるから他よりは狭いが、それでも3クラス分はゆうに入る広さだ。 萌えとしては有り難い設定だが、やはり無駄にしか思えない。 少なくとも理事長、生徒会、風紀委員を同じ階にしても何ら支障はないはずだ。 「全てが無駄だと思うんだよねぇ」 「はい?」 「いんやー、こっちのはぁなしぃ」 ピン、と音を立ててエレベーターは3階に止まった。 「ねーねー亜希斗ぉ、教室どれぇ?」 「…はい?」 明らかに馬鹿にした顔で亜希斗は俺を見た。 だって仕方ねーじゃん!1年の時は入学式と前後期中間期末試験の5回でしか校舎に入ったことねーんだから!主席の特権で始業式や終業式、体育祭等の特別行事は出なくてもいいと知ったから、入学式の次の日から俺は不登校さ。はははー。いや、だって主席維持してるし。 後ろを歩いていた亜希斗は俺の前に出てクラスまで俺を導いた。 ⊂(^ω^*)(#^ω^)⊃ |