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世の中は確かに変わりつつある
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「こんなとこにいたのかよ、夏輝」
「さっき振りだね、夏輝」

俺も亜希斗も食べ終わってたんだけど、俺は考え事していて周りの黄色悲鳴がめちゃくちゃでかくなったのに気が付かなかった。左側から近付いてきた存在にも。

「清っ、帝っ」

夏輝が声を掛けてきた二人の下の名前を呼ぶと周りの子達が大きくざわめき始めた。
――あんなオタクが呼び捨て!?図々しいんだけど!
って感じで。
だけど二人はそんなことには我関せず。
そんな二人はこの学園の王者とその次の地位を持つ生徒会長と副会長だ。
生徒会長の名前は篁帝。副会長は院内清。
会長にしたらまさしく生徒会長様って名前してやがる。
篁はさらっさらの銀髪をたなびかせて、夏輝を視界に捉えたカラコンを入れた青い瞳がキラリと光っている。
院内は、俺とは違う染められた金髪に金のカラコンを入れていてなんだかゴージャスだ。顔もゴージャス。
この三人がどうやって出会ったかなんて野暮なこと俺は訊かないぞ。どうせ帰りの途中に篁とは出会ったんだ。

「俺のモノになれ夏輝」
「あ、帝、夏輝が君のモノになるなんて自意識過剰にも程があるよ、まったく」
「俺はモノじゃねえっ!」

何だろうコレ、コント?てか何故ここに夢実と田沼君は参戦しない!?
そんなことを思っていると篁が夏輝を力業で立ち上がらせて腰を引き寄せた。
顎を掬い上げるようにした篁に、もう食堂中大騒然。会長に触れるな!とか理不尽極まりないと思いません?だってどっからどう見ても触ってきてるのは篁だし。むしろ院内はそれを止めようとしている。
あ、と思った瞬間、夏輝と篁の唇がくっついた。
食堂中は一瞬寒いくらい静まって、まるで爆発したかのようにキャーだのギャーだのホベラッだの聞こえて来る。ホベラ?

「ふ、ざけんなっ!!」
「「「キャーーッ!!!!」」」

力任せに体を離した夏輝は、そこでやめりゃあいいものをお約束の如く回し蹴りを篁に繰り出した。
あれだったら受け止められるわぁ、とその蹴りを脳内で分析してみたが、篁には横腹にクリーンヒットしたらしい。そりゃ痛いわ。

「っ、いい蹴りだ」
「触んな変態っ!元っ!」

あれ?篁サンってもしかしてマゾ?ドMですかと思っていたらいきなり夏輝に名前を呼ばれた。

「ぅえっ?」

10人掛けの長テーブルを回って夏輝は俺のすぐ傍まで駆け寄ると俺の腰にダイブして来た。挙げ句の果てに俺の腰に顔を擦り付けている。てか俺にも親衛隊いますからね。ほら離れて!

「元様から離れろっ!」

心の中で亜希斗に猛賛成する。だって痛い目見るの夏輝じゃん。俺の親衛隊にやられるのは俺が嫌だ。

「ぅえっぅえっ、汚ぇ…ぅえっ」
「元から離れなよ、夏輝」
「夏輝から離れろ!」

どうやら夢実と篁は俺と夏輝に離れてほしいらしい。嫉妬だ嫉妬!いいね!
てか汚いとか酷いね。篁が傷付いた顔してるよ。

「ほら、もぉ離れなよぉ」
「イヤだっ」
「ぇえー…」

イヤ、ほらね、周りの可愛い子ちゃん達が怖いから。ね?
てかそれ以上に亜希斗と何故か田沼君がめっちゃくちゃ怖いんですよ。元さん明日学校行けないかも。

「てかテメェ誰だ」
「僕達と同じクラスの菅原元だよ、帝」

さすが生徒会副会長。生徒の情報は全て覚えてますってか。

「そうなのか」
「菅原君の親衛隊隊長の大嶺亜希斗君も夏輝と同室の田沼一司君も月桂樹だから」

そう、忘れていたけどそうだった。この中で唯一夢実は赤薔薇組、つまりは体育会系のクラスだ。やっぱ絶対隠れマッチョ。

「あ?こんな奴いたか?」

篁が怪訝そうな顔でこちらを見てくる。まぁ、知るわけないよな。だって俺、学年主席の特権全部使ってほぼ一年間学校行ってねーもん。試験で満点取ってりゃ誰も文句言わねーべ。
だから同じクラスつってもまったく接点のない田沼君が俺のこと知っていたのは驚いた。

「会長が待ってるよぉ」
「元がいいっ」

えー、ですよ、えー。何言っちゃってんのコイツ。ほら、篁の顔めっちゃ怖いから!それ以上にまじで亜希斗と田沼君、何か増えて夢実も怖いからさ!
仕方ない、と夏輝の耳に腰を曲げて近付けて。

「6001号室ね」

夏輝にだけ聞こえるように教えてあげる。これで理解してくれないと困る。まぁ、別にいいけど。
そのまま俺と亜希斗のお盆を持って立ち上がる。亜希斗も慌てて立ち上がった。

「じゃねぇ。面白そうだから明日は学校行ってみるねぇ」

驚いた顔の夏輝と他の4人を放置して食堂を後にした。

⊂(^ω^*)(#^ω^)⊃

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あきゅろす。
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