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中編小説
世界は逆流を始めた




学園内の空気が一気に変わった。
転入生にちょっかいを出していた生徒会副会長が親衛隊隊長に手を出したのだ。
しかもそれに限らず、転入生に向けられてた、それ以上の甘い笑みを浮かべるようになった。
隊長である藍沢は困惑げに対応するだけで決して嬉しそうではないことは、傍目から見てもわかる。ただ、副会長が藍沢に構っているのだ。
藍沢は親衛隊内外共に信頼が厚く、ランキングでも上位なため制裁対象には成得ない。
寧ろ副会長の恋路を応援する副会長親衛隊隊員も見受けられるほどに。


「咲希、迎えに来たよ」
「っ、神山様…」
「隆一だと言ってるだろう」

そう言って副会長は藍沢を抱き締める。最早恒例行事となったことだ。

「おい、テメェ」
「田辺様、」
「何だい、冬樹」

生徒会会計の田辺も露骨に藍沢に手を出すようになった。
以前までは裏で藍沢に近付きちょっかいを出す程度だったのに。

「咲希には手を出すなと言ったはずだ」
「咲希は俺の親衛隊だよ。手を出して何が悪いの?」
「…ぶっ飛ばすぞ」
「手に入らないからって駄々をこねないで」

副会長の腕にさらに力が込められて、腕の中にいる藍沢が潰れたような声を発した。

「〜っ!」
「おいっ、咲希が嫌がってる!」
「あっ、ごめんね、大丈夫?」
「だいっ、じょう…ぶ、です」

大丈夫そうには決して見えないが。
転入生に現を抜かしていた時に比べて学園内の治安はよくなった。
ただ今でも会長と書記の親衛隊が不穏な動きをしていて、それを副会長、会計、そして藍沢の親衛隊が何とか食い止めようとしていた。
つまりは、藍沢には悪いが、この学園はほんの少しずつ、いい方に変わりつつあるのだ。

藍沢咲希親衛隊隊長より。


+++++++++++


日誌に集中しているフリをしながらも、机を挟んで対面に座る神山様に気を付けた。
あの日、神山様に抱かれてから、神山様の僕に対する対応が大きく変わった。それも迷惑な程に。

「こんなもの他の奴に任せちゃえばいいのに」
「ダメです。与えられた仕事をこなすのが人としての責任です」

最近よく思うのだが、僕は神山様を諭すようなことが多くなったと思う。

「ですから、神山様は職務に戻って下さい」
「…隆一って呼んだらいいよ」

ふてぶてしく言うものだから、素直に隆一様と呼んだ。が、神山様にはお気に召さなかったようだ。

「…、隆一、お願いだから、行って。ね?」
「…咲希はズルいよ…」

そう言いつつ、神山様は教室を出て行った。すぐ戻ると言い残して。

(´ω`*)(#´ω`)

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あきゅろす。
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