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中編小説





数か月振りに訪れた森宮園学園は、相変わらずのものだった。
完全に外と遮断された空間。異空間のような豪華な内装。
別にそんな次元の掛け離れた学園が嫌いだったわけじゃない。
嫌いだったのは、完全に二分された勢力。
人を傷付けることを厭わない学園の生徒たち。
幾ら学園のトップが言い聞かせても、結局裏で何が起こっているのかまったく状況は入ってこない。
入ってきても、コトが済んでからなのだ。

空はどんよりと雲が覆い尽くしていて、お世辞にも天気はよくない。
なんだか、この先に待ち構える俺らの未来を暗示しているかのよう。

はなからこんな暗ければ、明るい未来も暗くなるものだが、きっと明るいなんてこれっぽっちもないんんじゃないだろうか。


「なぁなぁ、壱流、こんなに金掛けて借金とかねぇのかな」

高橋が好奇心旺盛に訊いてくる。

俺たちは先頭集団から二歩程後ろを歩いている。

「借金なんて作る前に生徒のご両親たちからお金を巻き上げるからね。可愛い息子たちのためになら幾らでも払っていいって親がこの学園には腐るほどいるから」

高橋の疑問に、なんの疑いもなくスラスラと答える。
高橋は、ふーんと言って、確信めいた言葉を発した。

「壱流ってさ、森宮園について詳しいよな」
「っ…!」

体がびくり、と揺れた。

「別に余計な詮索するわけじゃないけど何かあったら言えよ?」

ああ、やっぱり優しい。
高橋を好きだと思う気持ちは確実に嘘じゃない。

高橋のように心の澄んだ者は、この学園にはいない。いたとしても、かなりの少数だろうが。

心配気に横を歩く高橋と目線を合わせて、

「大丈夫。高橋がいてくれるなら」

にこり、と笑った。

息を詰めた高橋に、敢えて何も言わず騒がしく進む先頭集団へ再び視線を向けた。


窓から見える曇天は、先程より少し晴れている気がしたのは、きっと気のせいじゃない。


(´ω`*)(#´ω`)

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あきゅろす。
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