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中編小説
quattro





青年は鍵盤にそっと指を置いた。右足は軽くペダルに乗せて小さく深呼吸をする。
ゆっくりと目を開いて緩く笑みを浮かべたその青年が奏でたのは『英雄ポロネーゼ』
動きの早い手は、その青年に掛かるとまるでドレミの歌を弾いているかのような、そこまで簡単に弾いているように見えた。
ここから見える青年のその手は些か小さい。
『英雄ポロネーゼ』と言うより、ピアノをやっている者には不利なはずなのに、それを物ともせず楽しそうに、本当に楽しそうに弾いている様は自分の目を強く惹きつけた。
しかも少しアレンジを加えているのか、ショパンの曲ではなくなっていると思う。
だが、実際のとこは、ショパンが伝えたかったところはしっかりと残しているようにも思える。

こんな演奏があるのかと、自らの聴覚を疑う。

そして曲の終盤。
気持ちよさそうに鍵盤から指を離してゆっくりと立ち上がった青年は、しっかりと審査員や観客を見据えてにこやかにお辞儀をした。
惚けていた観客は遅れて会場が割れるんではないかと思うほどの拍手が会場内を埋め尽くし、日本では珍しいスタンディングオーベーションに巻き込まれ、自分も無意識に立ち上がって拍手を送っていた。

(´ω`*)(#´ω`)

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あきゅろす。
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