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中編小説






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頭の横を塞ぐように伸ばされた腕は、自分が記憶しているより太く逞しくなっている。



「…何だよ、コレ」



コレ、と言いながら壱の腕をつつく。



「大学卒業まであと少しだ」

「…で?」



壱の言わんとしていることはわかりきっている。
彼にとって4年は短かったようだ。

壱には俺の考えていることはお見通しだったようで、



「…短くなんかねぇよ。長かった…お前がいない大学生活なんて考えもしてなかった」



でも、と続く言葉の先はわかっている。



「俺はまだ菊のことが好きだ。卒業したら、付き合おう」

「…フライングなんじゃない?」

「関係ねぇよ。長谷川って野郎とムカつくプレーしやがって。俺は3年前から我慢してたんだよ」

「初耳」

「初めて言ったつーか4年ぶりの会話なんだから。…で、返事は?」

「拒否権なんてないくせに」

「当たり前だろ。菊が言ったことなんだからな」





―――菊が俺のことを好きじゃなくなっていてもか

―――壱が俺のことを好きと言えるのであればね





「でも、菊は俺のこと好きじゃなくなったのか?」

「……」

「…菊、俺は好きだ。愛してる」

「浮気ばっかしてたくせに…」



俯いてそう言えば、壱の顔が近づいてきた。



「足りなかったんだ。菊が。菊は俺よりも真剣にアメフトが好きでやってて、日曜もトレーニング。二人だけの時間は少なかった」



確かに、チームメートとしていた時間は誰よりも長いが、恋人として過ごした時間は少なかった。



「責任転嫁って言うかもしれないけど、性欲の多い高校時代を好きな奴がいつもエロい匂いさせてんのにストイックに過ごせると思うかよ」

「…エロいって何…」

「汗の匂いとか、気怠げな雰囲気とか」

「…壱って俺をそんな目で見てたの…」

「おう」



開き直った壱は噛みつくようにキスをしてきた。
拒否なんて出来ないのははなからわかってた。



「……、…じゃあ、今は浮気しないの…?」

「聞いて驚くな。大学入ってからセックスしてない」

「へー…精液腐ってんじゃない?」

「バッカか!ちゃんと抜いたわ!菊のハメ撮り写真があるからな」

「はっ!!!?」



ニヤリと笑う壱の顔をひっぱたく。



「捨てろ!」

「やだね」

「はぁ!?」

「本物をくれるなら、捨ててもいいけどな」

「……俺の気持ち、知ってるくせに」

「ああ。だからこそ訊いてるんだ」



バカ、と言いながら壱に抱きつく。しがみつくといった方が正しいのかもしれない。



「…今度こそ浮気は許さないよ」



頭の上で壱が笑う気配がして、強く抱きしめた。





END

(´ω`*)(#´ω`)

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あきゅろす。
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