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中編小説






男女間の恋愛は、種を残すという本能的なところから発生するものだとされ、同性間の恋愛は本能的なところからではなく、人間として好きになったという紛れもない事実であると誰かが言った。



だけどそうは言っても人間には邪な気持ちというか、いらぬ感情が横槍を入れてくるわけで。

いくら文面で素敵な言葉を綴っても気持ちが冷めることもある。実際俺は今そこにいる。


あー、いや、俺が、というよりかは、彼が、と言うべきか。




彼の浮気は今に始まったことじゃない。

そりゃ最初は何で?と思ったけど、もしかしたら彼の浮気相手からしたら俺のことも“浮気相手”なのかもしれない。

そう考えると仕方ないなぁという気持ちになってしまう。



色んなことを許容出来るくらいには、好きだったつもりなんだけどね。





だから俺は彼との自然消滅を目論んでいる。

どちらにせよ彼とは高校卒業と共に別々の大学へ行くことになるだろう。

そう考えるとラクなものだよ。





++++++++++++





彼――石神 壱は俺の目の前に立ちふさがってこちらを睨み付けた。



「…R大行くってほんとかよ」



なんだそのことか、と壱の鬼の形相を見ながら思う。



「ほんとだよ」

「ンだよ、K大行くって言ってただろ!」

「それより好条件の推薦が来たんだよ。それに噂によるとR大にはクリスマスボウルのMVPの奴が入ってくるらしいから」



また強くなるぞー。と俺は呑気に言う。

俺――中野菊はアメフトをやっていて、それによって推薦をいくつも貰っていた。
だから今までは壱も進むK大の推薦を受けると考えていたが、それは思うところによりやめたのだ。



「ンでだよ…俺は、」

「なぁ壱」



何かを言おうとした壱を遮りその名を呼ぶ。



「俺たち別れよう」

「…は、」

「それで別々の大学いって、地域一緒だから甲子園ボウルでは当たれないけど、関西リーグ決勝戦で戦おう」



俺と壱は一緒のアメフトチームに所属していた。
俺がクォーターバックで、壱がワイドレシーバー。野球で言うところのピッチャーとキャッチャーだ。

クリスマスボウルという全国高校生一位を競う大会では惜しくも準優勝で終わったが、俺も壱もかなりの有望選手として有名な自覚がある。

小学生の時はフラッグフット、中学からはアメフトをずっとやってきた俺たちはそれはもう息の合ったプレイをした。

だからこそ大学側は俺たちセットでほしがったが、俺は壱と離れようと思った。



「っ、俺の話を聞けよ!」

「“俺が好きなのは菊だけだ”って?そんなの何回も聞いてるよ」

「っ、」

「でも壱は浮気をやめないじゃないか。だから別れるんだ」

「菊っ!」

「それで、大学を出ても同じ言葉が言えるなら、また付き合おう」



そんなの、無理だと思うけど。気持ち以前に、大学生活の4年というのはあまりにも長い。



「菊が俺のことを好きじゃなくなっていてもか」

「壱が俺のことを好きと言えるのであればね」



フィールドに立った時と同じ、その真剣な眼差しを最後に、俺と壱は別れた。





――――――それから4年。




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(´ω`*)(#´ω`)

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