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中編小説
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フランス入りを果たして暫くした頃、俺はいてもたってもいられなくなり教授を呼び止めた。

「コンサート会場に行きたいじゃと?行けるわけなかろう。本番は明後日じゃい」

一刀両断だった。
仕方なく俺はセーヌ川の辺で自前のヴァイオリンを取り出す。フランスに車前に調律師に出しといたのだ。
ヴァイオリンを肩に乗せて弓を滑らせる。
思い浮かぶのはやはり彼のことで、自分という存在が甘い何かに浸食されていくようだった。

ヴァイオリンは見た目以上に体力を消耗する。
背中を流れる一筋の汗を感じながらヴァイオリンを肩から下ろす。
その時、剛の耳に拍手の音が鳴り響くのを感じ、音の方を見た。するとそこにあったのは、剛に向けて笑顔で割れんばかりの拍手をしてくれる人たちだった。
それは1人2人とかのレベルではなく、軽く30人はいるだろう。子供からお年寄りまでいる。
フランス語はわからないが、彼らが発する言葉が讃辞のものであることは表情を見ればわかった。

途端に剛の胸に熱い何かがこみ上げてきた。
今まで感じたことのない不可思議なソレは、自分の演奏で喜び感動してくれる存在がいることへの歓喜だった。

この時、剛は初めて演奏の喜びを知った。




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(´ω`*)(#´ω`)

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