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中編小説
8.それでも幸せだったよ






悲しいくらい時間は早く過ぎる。虎太郎と偽りの関係を初めて早くも半年経ちそうだった。



「別れる決心はついたのか?」


何それ、って思う。


「そんなに虎太郎と別れてほしい?」

「まぁな。言ってるだろ、好きだって。いくら偽りだろうが沙英の彼氏は原だ。今俺が一番ほしい場所だ」


真剣に言うからツッコむことも出来ない。


「僕の彼氏という場所に人がいなくなっても、他の誰かがその場所に居座るとは限らないじゃない」

「少なくとも、俺以外はな」

「…イヤな人」


知ってる。と会長は笑う。


「愛している人の恋が叶わなければいいと思っているくらいだからな」

「…もっとひどい」

「沙英だってそう思っているんだろ?」


図星をつかれてそっぽを向く。


「そういうとこも可愛いとは思うけどな」

「何それ。会長ってバカだよね」

「今更。沙英バカとでも言ってくれ」

「…気持ち悪いよ、本当に」



でも、本当に別れたらどうしようか。会長に乗り換える?実際こんな会話しているけれども会長は僕にとって大切な人で、そう簡単に乗り換えられるほど軽く見ていない。

会長を利用するなんて、そもそも出来ない。



「辛い別れになるかもしれないのに?慰めはいらない?」

「それでも幸せだったから、大丈夫だよ。たぶん」

「最後なんだか心もとないなぁ」


そう簡単に諦められるほうがおかしいんだけど。


(´ω`*)(#´ω`)

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