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中編小説
さん





痺れを切らせた美沙緒ちゃんが俺のクラスに来たのはそれから少し経った頃だった。
何でそんなに遅かったって別に恥ずかしいだとか後ろめたいとかあったわけじゃないのよ。それはそれで失礼だけど。



「告白されたらすぐに返事を寄越すものだよ、尚」



ザワ、と教室の中が揺れた。

俺と美沙緒ちゃんの関係は有名だけど、みんなその関係の正確な名称を理解している。
だからみんなは『セフレから恋人!?』みたいな感じでザワザワザワザワ。ちょっと、プライベートなことなのにー。


「答えわかってるクセに」

「それでも答えるのが礼儀ってものでしょ」

「この場で?」

「この場で」


うーん、と久しぶりに頭を悩ます。



「ゴメンナサイ」



教室がざわりと揺れた。何みんな期待しちゃってんの。

美沙緒ちゃんの眉が一瞬下がるのを見逃さなかった。だけどそれはすぐに元に戻る。



「冗談5割だったけどやっぱちょっとショック」

「え、残り5割本気?」


本気と書いてマジ、と読みます。


「尚って意外と僕のことふざけた存在で見てるよね」

「いやいやいやいやいやいや、そんなことないよぉ」

「数多ければ否定が強いとか思ってないよね」



ま、いいや。と美沙緒ちゃんはスッキリした顔で言った。フった後の顔がスッキリって何かちょっと複雑だけど。



「僕より本気で尚狙ってる奴いるし。頑張ってね、尚」


尚はウサギさんで、あの馬鹿は狼さんだから。

とか何とか謎の言葉を残して美沙緒ちゃんは背中を向けた。

馬鹿なのに狼なのか。馬か鹿って言ったら面白いのに。ん?てか狼って誰?そもそもウサギなの俺?





++++++++++++





「って言われたんだけど馬鹿な狼って誰だと思う?かいちょ〜」

「………知らん」


わあ、会長素っ気ない!

暫くして放課後です。相変わらず書類は減りませんね!いやいやでも俺の力はこの程度ではありません!



「…で?」

「で?」


会長が何か先を促すように訊いてきたけどぶっちゃけ話すことは全て話しちゃったんだけど。


「辻とは、…その、セフレは、続けるのか?」

「ああ、そのこと」

「…」


そういえば美沙緒ちゃんと別れた後、美沙緒ちゃんからメールが届いたわけよ。

内容は、セフレやめようか的な。

そもそも美沙緒ちゃんには婚約者がいて、そんな退屈な人生イヤーってことでマジデンジャーな火遊びに手を出したということがありまして。
火遊びってのはつまりは俺との関係のことなんだけど、美沙緒ちゃんは美沙緒ちゃんなりに俺と向き合ってきたんだろうな、って。



「…そうか」

「うん。だから今俺フリーなんだぁ」



思ったままのことを会長に言ったら渋い顔をされた。まあそりゃそうだわな。

にへら、と笑って両腕を広げた。



「お前には、本命はいないのか?」



あちゃ、こういう話になるよね。


「いないよぉ。多分ねぇ、かいちょーより好きになれる人なんていないと思うんだぁ」

「…は?」

「これでも結構会長のこと好きなんだよぉ」


すごい訝しげ!!


「多分俺タチよりネコの素質あると思うんだよねぇ。会長の腹筋とか見ると欲情するもん」

「………………抱きたいとか、そういう方では…」

「ないない、ないってぇの。」


だから会長、そんな変な顔やめてください。



「…はっ」

「ん?どったの?」

「これはチャンスか?」

「あい?」


何かいきなり真剣な顔で見つめられたんですけど。



「美波尚」

「は、はい?」


「結婚を前提にお付き合いしてください」





この時俺は思った。

ついに会長が壊れた、と。

まあ、会長は美沙緒ちゃんみたいに短気じゃないみたいだから追々返事しようかな。

「ふつつかものですが、よろしく」って。




END...?

next あとがき

(´ω`*)(#´ω`)

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あきゅろす。
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