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中編小説
:)書記を攻略せよ!






「…萌芽、…恵……」


「…僕か」



突然僕のクラスにやって来たのは生徒会書記様だ。

書記様が何を言いに来たかなんてもうおわかりだろう。僕もわかる。


「…いま、…あいて…る?」

「…大丈夫です」


悲しきかな今の僕にこれといって予定はない。




++++++++++++




「…三津、に…ちかづく、な」


まぁその話だろうとは思ってましたけど。


「これは先日会計さんにも言ったんですが、僕から有紀君から離れるのは難しいんです。彼の性格、ご存知でしょう?」

「で、も」

「じゃあ有紀君の替わりに僕と友達になってくれますか?」


書記様の瞳が困惑に揺れたのがわかった。


「ふふ、冗談ですよ」

「…じょう、だん?」

「書記様にとって僕は恋敵ですもんね」


また困惑げに揺れる瞳を見て頭を傾げた。


「おれ、しゃべるの、にがて」

「ええ、知ってます。ご両親同士ハーフで、日本人のお祖父さんが床に伏せって、看病のために日本にいらっしゃる」


学園の殆どが知っている情報だ。


「僕もこう見えてハーフなんです。イタリアと日本の」


書記様は日本とイタリア、イギリスとアメリカのクォーターになる。寧ろすごいよね、四カ国って。


「それに僕は国際科でアメリカ英語を専攻してて、こう見えて結構喋れます」


何言ってるんだと書記様の目が語る。素直でいいこと。


「つまり、書記様が望めばイタリア語でも英語でも、勿論日本語でもお話出来るんです。書記様、日本語より英語の方が得意でしょう?」


こくん、と頷いた。


「会長は国際科で流暢にお話できますし、副会長様はアメリカ人とのハーフなので英語は母国語です。会計は知らないけど」


会長は実は同じクラスだったりします。あまりいないけど。


「でも、みんな何で、敢えて書記様の苦手な日本語でお話して下さると思いますか?」

「………いじ、わる?」

「違います!」


まさかの予想外な答えでした。


「"喋れない"というのは大きな弱点です。生徒会の皆さんはそれをわかってるから敢えて日本語でお話するんです」


書記様は俯いた。


「有紀君みたいに少ない言葉で通じるのはそれはそれでいいでしょう。ですが、自ら話すことをやめないで下さい。人の感情ってものすごく難しいんです。………ん?」


あれ、腕掴まれた。


「……めぐ、み」

「…はい?」


あれ、名前呼ばれた。


「お、れ、かんばる。がんばって、気持ち、伝える」

「はい、がんばって下さい」

「でも、苦手、日本語…めぐみ、練習相手、なる」


あれ、僕か。


「三津じゃ、ダメ」


ま、でも、


「いいですよ、いつでも呼んで下さい」


僕が笑ったら書記様も笑った。


「天童、絢義」


書記様が自分の名前を仰いましたが。
面白いよね、クォーターなのに名前が日本名だなんて。一様ミドルネームもあるらしいけど、敢えてそれは使われていない。


「ええ、知ってます」

「ち、がう」

「?」


何が違うねん、とツッコミたくなった。


「アヤ、て、呼んで」

「…えー、と」

「呼んで、」

「………アヤ?」

「ん」


ああ、書記様はワンコだもんね。そりゃあ構いたくなる有紀君の気持ちもわからなくないかな。







(…めぐみ、すき、なっちゃった)

(´ω`*)(#´ω`)

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あきゅろす。
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