[携帯モード] [URL送信]

SS
孤独の夕暮れ
(ユーリ死ネタ注意)レイユリ




目の前の光景が理解できなかった。

彼、レイヴンの視界に入って来るものは、
ただ、赤だった。
真っ赤だった。

その鮮血は、それを見る者の瞳をも赤く染めるような鮮やかさだった。

レイヴンはその倒れている誰かを凝視した。

黒。
美しく、凛々しく、艶やかにして気高き黒。

(なんで、………)


『なぜ赤?』
『彼はいつも黒かった筈』
『こんな訳がない』
『違う』
『違うんだ』


抱き起こしたその顔を見て、レイヴンは絶叫した。

“嘘だ”と、泣き叫んで。



その後。
ユーリの身体に流れ、付着していた血液を綺麗に拭き取り、二度と開く事の無い目をじっと見つめた。
涙が止まらなかった。
変わってやれるのならそうしてやりたかった。
だが、自分は無力だった。

「せめて……」

守れなかった、

「償い……」

一緒に………。


小型のナイフを心臓魔導器に当てた。

あとは刺すだけ。
それだけで良かった。
それだけの事だ。
「青年……」

涙は止まらない。
手が震えた。

「力を……いれ、な………」

カラン、という音と共にレイヴンの手からナイフが落ちた。


心臓魔導器は動いていた。

レイヴンは自分の弱さと悔しさに、涙と嗚咽が止まらなかった。

(死ねない。)
(怖い。死にたくなんかない。)

そんな下らない意思を持つ自分が誰より憎かった。





外は既に夕日が見えていた。
赤を拭き取った筈のユーリの顔は、夕焼けに照らされ再び赤くなっていた。

その様子を見て、レイヴンは悲鳴に近い声を上げた。
レイヴンは再びユーリを抱き起こし、嗚咽を堪えたのだった。

そして、ごめんね、と言い続けた。
既に嗚咽は堪えきれず、涙も流れたまま止まる訳もなかった。

一生消えないこの記憶と、償いきれない自分の過ちに、必死に許しを乞うために。

end
   







あとがき***
ええと、まあ、二人とも死ぬ事が泣ける事に繋がるってだけじゃなくて、こう・・・おっさんを生かしたかったんです。死ぬことが出来ずに泣くっていう情景が書きたかったんで。。。


[*前へ]

あきゅろす。
無料HPエムペ!