番外編『悪気はないけど』
雅治がなんたら旅行に出かけると聞き、こももは約1週間、雅治の部屋を守らねばならない。
こももを連れていってくれないなんて、と拗ねたくなるのを我慢して見送った。
「行ってくる、」
『いってらー』
適当な返事をした。
いっそ、雅治の持つ鞄の中に入っていこうか、とまで考えた。
それだけ、雅治がいない生活なんてあり得ないのだ。
「良い子で待っときんしゃい。」
『はーい、』
バタン、と閉まるドアにこももの尻尾は素直に感情を表していた。
それを見た岡田さんが笑いながら言った。
「こももさん、寂しいですね?」
『(別に、)』
「おやつにしましょうか?」
『おやつ!?』
雅治の背が見えなくなるまで窓から見送るよりおやつをとった。
薄情者。
それでもおやつをもらい、すっかり機嫌がよくなるこもも。
かなり現金だ。
『暇だなー』
雅治の代わりに散歩へ連れていってくれるのは岡田さん。
散歩は嬉しいけど、なんとなくつまらないのは雅治じゃないから。
1週間の辛抱だと自分に言い聞かせてきたけどストレスも溜まりに溜まり、限界を超えてしまった。
『だぁ!!』
いつも昼寝に使う少し痛んだソファーに飛び乗り、座る。
ふと気づいたのはそのソファーの縫い目が裂けていること。
やたらそれが気になり――
『あースッキリした!』
気がついたときには縫い目の裂けた部分はいよいよ裂け、ソファーのスポンジ(つまり中身=実)をほじくっていた。
辺りにはスポンジが散乱。
『……昼寝でもしようかな。うん、そうしよう!』
怒られることなど百も承知で知らんふりをすることにした。
そして、ふと思ったことを言ってみたり。
『ソファーなだけに“実”がない、なんちゃって。』
「ほー?いつから音階について勉強したんじゃ?」
『げ!雅治!』
帰ってきていたことさえ知らず、こももは寝るふりをする間もなく説教をくらった。
「なんてことしたん!ソファー壊して!」
『だって!雅治いなくて暇だったの!』
「言い訳しなさんな。壊したんじゃからこのソファーはやる。」
『やりぃ〜!』
「じゃけ、こももんベッドはこれからこのソファーじゃ!」
『えー!?』
叱られた挙げ句、寝床を失い、いらないのにベッドをいただいた。
『(やっぱり鞄に忍び込んどけばよかった!)』
悔しいから反省なんかしてやらないもん!
** END **
ソファーの実を出したのは來恋ちのワンコの実話でした。
こもものダジャレ、わかりました?
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