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14話『怖い夢』


あれから、こももはゆっくり時間をかけて体調を回復させていった。

手は尽くすが特になんの役に立たないことは悲しい事実だった。

しかし、最善を尽くすことは絶やさなかった。


「こもも?今日はどこにいく?」

『どこでもいいよ?雅治となら…』


まだ本調子じゃないというものの少しずつ尻尾を振って返事をするようになった。

それだけで十分だ。


「じゃあ、いつもん公園かの?」

『うん!』


走るなんてことはまだ出来そうにないからゆっくり歩くことにした。

公園に着くと先客がいて野放しには出来ないため、仕方なくこももを鉄棒にくくりつけた。

そうすると、一人の子供がこももの存在に気づき、近寄ってきた。

それを見て、彼女の体調は万全ではないから子供に弄(いじ)くり回されてまた体調を崩したら…と不安だった。

しかし、なんら問題はないようにこももはきちんとお座りをして尻尾を振って見せた。


「わんわん〜」

『あたし、こももって言うのよ?』

「わ〜んわん!」


小さな子とすぐにとけ込み、じゃれて遊んでいるのだから安心した。

暖かい光景はそれを見てた俺の心和ませることになった。


「あ、ちょーちょ!」

『………………』


尻尾の先に止まった蝶々を見て子供が手を叩いて笑っていた。


あの時の楽しそうな笑い声が俺の中でこだまして静かに消えていった。





完全に回復したこももは散歩の度に蝶々や小鳥を追って河原を走った。

いつだって俺はそれについて走っていた。


『雅治ー?今のこももは誰よりも早く走れるよ!』

「車より?」

『気持ちはなによりも早くね。』

「気持ちだけなんか。」

『だってさ〜?大体、車と同じくらいの早さで走るって言ったらキリンとかじゃないの?』


そう笑いながらピョンピョンと飛び跳ねていた。


こももを理解しているのは俺だけで、こももを愛してるのも俺だけ。

宛もなく散歩するごくごく普通の日常でさえ、宝物だ。

ダラダラ過ごしていても、こももと一緒だから幸せなものとしか言いようがなかった。

ユエと付き合ったせいで離れた二人の間の関係も回復し、より強い絆で結ばれた。


『2度目の浮気は許さないんだからね!』


なんて彼女は冗談で言えるようにもなっていた。喜ばしいことだ。


『今度こそ、ずーっと一緒ね?』

「あぁ。ずっとな?」


と、二人で不変を誓ったは良いが、10年も経った時のこももをふと想像して恐れた。

10年も経てば、俺は28歳前後。

どんなに長生きする犬がいたとしても犬の命に限りがある。


『雅治?こももはずっと雅治が大好きだから、ずっと一緒だからね?』


改めて言う彼女の言葉を聞き、俺は夢から目覚めて飛び起きた。

周りを見渡し、ここが自室だとわかるとホッとした。

……また、夢?


額の汗を拭い、一息吐く。


「こないだも変なん見た……」


こももがいなくなるような、そんな感じがしてならなかった。

なにかが襲ってくるような…

そんな怖さから逃げようと、隣で眠るこももを抱き寄せて再び眠りについた。
















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