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6話 入り交じる恋愛感情


唯智は散歩を終え、仁王に部屋まで送ってもらい、無事に部屋に戻ってきた。


「おやすみんしゃい。」

『おやすみなさい。』


部屋に一人になった唯智は日記を書き始めた。

幸村が朝食をご馳走してくれたこと、跡部や切原、丸井の授業は勉強というにはほど遠かったけど楽しかったこと、仁王の授業は怪談で潰れたことなど。


『(仁王先生の場合、授業どころか私の反応を見て楽しんでるだけみたい。)』


夜の散歩に付き合ってもらってもらい、10年ぶりくらいに男の人と手を繋いだこと。

そして、明日は跡部にジャケット返さなきゃ、“この忘れ物は彼に会う口実だったり”と綴ると日記を送信した。


『……さて、お風呂入ろう。』


暢気に鼻歌なんか歌いながら唯智は風呂場へ消えていった。

その頃、日記を受け取った主は口元を上げて笑っていた。


「仁王が反応を楽しんでる、か……」


様子を見よう――そう呟き、彼は返事を打ち始めた。


“散歩は楽しかったみたいだね。

少しは教師たちと仲良くしているようで僕は安心したよ。”


それだけ打ち、返信した。

この日、“日記さん”とのやりとりは日付が変わるまで続いた。

“日記さん”が教師の誰かであることを知るゆえに出来ることだった。


『今日の日記さんって…誰なんだろう?返信くるなんて珍しいし……』


そう気にかけるがなぜか聞き出せない唯智は興味を沸かせる一方だった。


――コンコン


ノック音が聞こえ、唯智は部屋のドアにあるのぞき穴から外の様子を見た。


『……真っ暗?』

「唯智?まだ起きてんのかー?」

『……丸井先生?』


声を聞いて安心した唯智はドアを開けた――が。


「眠れんのか?」

『あれ?丸井先生じゃないの?なんで仁王先生が?』

「俺は声色真似んの得意なんよ。」

『……跡部先生のも?』

「あん?俺様の声が聞きたいってか?」

『!』


顎をすくわれ、仁王のやらしい視線が唯智を刺激する。

あっと言う間に顔が赤くなる唯智を見て、仁王はクククッとのどを鳴らした。


『もぉ!からかうのはやめてください!』

「クククッ、悪いのう。で?なにしとったん?」
『あ、メールを――』

「ふーん?ま、程々にしんしゃいよ?」

『はい。』

「じゃ、おやすみ。」

『……ふふ。』

「なん?」

『先生、そのおやすみって言うの、2回目ですよ?』

「……そうやったの。じゃあな、」


苦笑すると仁王はすぐにその場を立ち去った。


『心配してくれたのかな?』


昼間の怪談のこともあり、仁王が気にしてくれたんだと思うと顔が綻(ほころ)んだ。










彼女は時間ができる度に部屋を訪れる仁王とはすぐに打ち解けて仲良くなることができた。


「あ、またじゃ。」

『先生のくせにズルいー!』

「“仁王先生”じゃから許されるんよ?」


会議室の窓に掛かるブラインドの隙間から外で楽しそうにしている二人を忍足が見ていた。


「なんか楽しそうやし。な、跡部?」

「あぁ、」

「仁王のやつ、まさか唯智に手出す気じゃねーよな?」

「さぁ、どうやろ?そういうんは丸井がよく知ってるんとちゃうん?」

「そうだ。ず〜っと同じクラスだったんだ。俺ならイヤになっちまうな。」

「んだとー?宍戸ガキの頃からずっとデカ犬に付きまとわれてたじゃねーかよ!」

「んだと!?丸井なんかワカメが付きまとってんじゃねえか!」


宍戸と丸井がいがみ合いを始めると幸村が二人の頭をゴンとぶつけ合った。


「こらこら、喧嘩しない。」

「「はい、」」

「しっかし、納得いかねぇな〜」

「なにが?ワカメって言われたことか?」

「違いますよ宍戸さん!仁王先輩ですよ!なんであぁも唯智に世話焼いてんのか納得いかねぇっス。」

「あ、切原、仕事盗られて不満なんだろ?気持ちはわかるC。」

「ま、仁王先輩相手に勝ち目なんかあったもんじゃない。諦めてはいます。」


会議室での話題は唯智と仁王のことで持ちきり。

唯智が来て1ヶ月になるが夜は決まって仁王が散歩に連れ出していたことをみんな知っているからだ。


「はっ、まさか落とす気なのか!?」

「えーマジマジぃ!?」

「やめぇや、丸井もジローも。変な勘ぐりは入れるもんやないで?」

「でも、忍足サンも思うっしょ?仁王先輩のこと。」


隣では黙り込んでいる跡部がおり、忍足は下手な刺激を与えるわけにはいかないと思い、なにも言わなかった。


「ま、教師と生徒だかんな。俺はないと思うけど?」

「(教師と生徒、ねえ?ふん、仁王ならわからねぇだろうが。バカ宍戸め。)」

「宍戸の思考からすれば考えられへんわな。」

「「あー確かに、」」

「そこ、ハモるな!」


切原と丸井が同時に相づちをうつと宍戸が突っ込みを入れた。

その時、


「悪い、遅うなった。」


ようやく仁王が来た。

会議の時間に間に合いはしたが全員そろっていることがわかると一瞬遅刻したかと不安に思ったらしい。


「揃ったな。始めるぞ、」


不機嫌そうな跡部の一言でぎくしゃくした職員会議は始まった。


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