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19話 君が好き


跡部は仁王の姿が見えなくなると唯智と向き合った。

しかし、いつまで待っても泣き止まない彼女に辛抱の尾が切れたようで口を開いた。


「頼むから泣くな。どうしたらいいかわからなくなる。」

『だっ…て、にお…せんせ、は私が…』

「……仁王のことでなんで泣く必要がある。」

『仁、王…せ、せいを傷つ…けたから、』


そう必死に言葉を繋ぎながら言う唯智の涙を跡部は拭った。


「唯智、泣いたって事態は解決しねぇぞ?」


そう跡部に言われ、唯智は仁王とのことを思い出した。


“俺はどうなるん?”


仁王の気持ちを無駄にしない為にも、と自分に言い聞かせ、意を決して唯智は口を開いた。


『跡部先生…』

「ん?」

『私、跡部先生が――』


そう言いかけたが跡部が唯智の唇に手を翳(かざ)し、制止させてた。


「それは俺に言わせてくれないか?」


そう言った跡部の言葉に涙を流した唯智を抱きしめて跡部は言った。


「唯智が好きだ――」

『はい、』


嬉しそうにそう返事をした唯智は自ら跡部に抱きついて言った。


『私も跡部先生が好きです!』










その翌日。

ハッピーエンドになるかと思われたが残念なことに、最後の敵が跡部を待っていた。


「ダメに決まってんだろ!?」

「なんでだ!」

「親代わりである俺が認めない限りダメだ!交際は認めない!!」


それは向日岳人だった。

唯智をずっと世話してきた向日は断固として拒否し続けた。

跡部が相手だと言うのが気に入らないのかもしれないが。


『がっくん、まるでお父さんみたい。』

「良いか唯智!跡部なんかろくなヤツじゃねんだぞ!?わかってて好きだって言うのか!?」

「良いじゃねーか岳人。唯智は俺が好きなんだからよ?」

「おまえは黙ってろ!!」


唯智に手を出すなとこんこんと跡部に言い聞かせる向日。

それも聞き飽きたのか、跡部は唯智を抱き寄せた。


「好きなんだから良いんだよ。そういうのは理屈じゃねぇんだ。」


額同士をくっつけ、幸せそうに笑い合う二人を見て向日の怒りは増す。

それを忍足が必死に押さえる。


「まぁまぁ、岳人。」

「唯智は嫁入り前なんだぞ!?」

「んなに心配すんなよ岳人。」


唯智をお姫様だっこをし、跡部は向日に言った。


「唯智は死ぬまで養ってやるからよ?」

「こんのアホ部ー!!」

『せ、先生…』


恥ずかしがる唯智の頬にキスをして跡部は消えていった。


「セックスは結婚するまで、結婚は唯智が20歳になるまで許さねぇかんなー!!」

「がっくん、諦めな〜?あぁなった跡部は止めらんないC。」


その日の夜、腰とお腹が痛いと向日に泣きついた唯智から時間をかけて話を聞けば、跡部に抱かれたという。

向日はすぐに跡部に殴りにかかった。


「わかった。20歳なるまで絶対しない。それなら付き合いを認めるのか?」

「いいぜ?そん時は結婚も認めてやるよ。」


跡部は清いお付き合いをすると不利な契約を向日と結んだ。

結局、向日にとって唯智は大事な妹分なため、彼女の幸せを願っているだけだった。


「まぁ、頑張りや跡部。」

「そうそう、俺ん告白と気持ちを無駄にしたら容赦なく叩き潰すぜよ?」

「ふふ、そうだよ?契約を破ったら跡部はみんなから袋叩きにあうんだろうね。」

「(幸村くんが真っ先に潰しにかかるだろうな…)」

「丸井なにか言った?」

「いや…」


ビクッと肩を大きく震わせた丸井は切原の陰に隠れた。

そのやり取りを見ていた唯智は笑っていた。


「唯智?」

『あ、はい。』

「幸せになりんしゃい?」

『……はい、』

「お姫さんは王子とがお似合いなん。」

『じゃあ、仁王先生はなんですか?』

「そうじゃのう…」


言いかけたとき、唯智を呼ぶ声が聞こえた。

すいません、と言い去っていく唯智の背に仁王は苦笑しながら言った。


「王子の引き立て役の従者か家臣か…」


そして再び言った。


“幸せになりんしゃい、お姫様”


跡部と手を繋ぐ姿を見て、ふと笑うと仁王は俯いた。

その様子を見て切原が心配して声を掛けた。


「仁王先輩、」

「なん?」

「あの……」

「心配しなさんな。失恋ごときで落ち込む俺じゃなか。じゃけ……」


始めに唯智と太陽の元を歩くんは俺じゃと思うとった。

そう言った仁王は切原から見ると落ち込んでいるように見えた。


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