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Sleeping Beauty


春に向かうはずである時節とは逆に雪が深々と降り積もる。

暗闇と化すはずの新月の夜なのに白い雪で少しだけ辺りが明るく見えた。


『おやすみ。』


そう、明良が言ってから間もなく彼女は眠りについた。

俺はこの時を待っていた。


「(本当に寝たか?)」


安定した呼吸を聞き、間違いないとは思ったが念のために目の前で手を振ってみた。

反応はない。


「口元、緩んでやがる。なんの夢見てんだよ。」


眠りについたはずの明良は起きているかのように表情が柔らかかった。

まるで自分に笑いかけているようだ。


「かわいい寝顔。」


皮肉を含み、明良の頬をつつけば眉間にしわを寄せ、微かに唸りながら俺の手を払いのけた。


「明良?」


声をかければ俺の手をすぐに捕らえ、再び深い眠りに落ちていく。


「俺ら、付き合って何年か忘れちゃいねぇよな?」


彼女――明良と付き合って7年になる。

忘れもしない。

高校時代から付き合い始めたは良いがアメリカへ留学することが決まり、遠距離を経て今ここ――日本の明良のマンションにいる。


「…ずいぶん待たせたよな。」


遠く離れてる間、なにを考え、なにを見、なにを聞き、なにを思い過ごしてきた?

俺は明良のことを考え、思い過ごしてきた。

もう、寂しい思いはさせない。


「眠り姫。今、キスで目を覚ますにはもったいないくらい愛おしい姿だ。」


シルバーの誓いの証を左の薬指に滑らせた。

彼女が翌朝これを見てなんて言うか楽しみだ。


「(まさか結婚の申し出を断るなんて…あるわけねぇよな。)」


お互いの絆と愛の強さを知る故か、そんなことを考えては“あるわけがない”と確信している自分がいた。


「さて、そろそろ寝るか。」


ぐっと延びをしてから明良の布団に入り込んだ。

すると俺に抱きついて落ち着いた。


『景吾……』


そうだ。

夢の中でも彼女が求めるのは俺であって欲しい。


「愛してるぜ、明良。」





Sleeping Beauty
美しい我が姫に永遠の愛とキスを





** END **
#2008.2.23

4日前から書きたかったのに多忙でやっと仕上がりました↓
ちなみにただいまの天気を話に盛り込み(?)ました。




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