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透けている心


なぜ、素直になれないのか自分でも不思議に思う。


『最悪!なんでこんな目に遭ってんの?だいたい、跡部!アンタのせいだし!』

「だったら帰りやがれ。」


元々悪いのは忍足に騙された私がなのかもしれない。

今日、忍足に呼び出された私は待ち合わせ場所に来た。

そこにいたのは忍足ではなく片思い中の相手、跡部景吾がいた。

はめられた、と気づくもののどうしたらいいかわからず、いつものごとく言い合いの喧嘩が始まる。


「(なんで忍足の代わりにコイツのボディガードなんかしなきゃならねぇんだ。)」

『(なんで呼び出し主がいないのさ。買い物に付き合えって言ったのどこのどいつだよ!)』


忍足なんかに騙された自分はなんてバカなんだろう、と思い始めるとなにからなにまで嫌になる。


「で、どこ行くんだよ。」

『え?』

「買い物あるんだろ?」


なんでこんなことになったのかわからないけどこの日、一日跡部と過ごすことになった。

まるでデートみたい。


昼下がり。

いい雰囲気の中、デートも後半に至る。


「ちょっと待ってろよ。」

『あ、うん。』


跡部は私を一人残し、店内へ入っていってから間もなく、声をかけられた。

それが跡部ではないことはすぐにわかった。


「あれ〜?お姉ちゃん一人?それなら俺らと遊ばない?」


ナンパだとわかり、無視をした。

しかし、かなりしつこく、腕を掴み、無理矢理引っ張ってくるため、助けを呼び求めた。


『いや、放してー!』


それに跡部は気づき、のんびりとした歩調で私たちに近づいてきた。


「おい、放してやれよ。」

「なんだてめぇ!」

「てめぇらの目は節穴か?こいつには男がいるんだぜ?そんな女がおまえらごときに落ちるかよ。」


私を跡部が抱き寄せた。

ナンパしてきた人たちにすぐ去るよう目が語ってた。

周りからの視線もあり、そそくさと逃げていった。


『…誰が助けてだなんて言ったのよ!』


助けてもらったのに素直にお礼も言えないのか私。

幼稚園児以下だ。


「……」


それからはなにも跡部は言わなかった。

私が悪いのはわかってるけど、素直になれないのはなんでだろう?


「てめぇはとんだじゃじゃ馬だな。」

『け、喧嘩売ってんの!?』

「嫌いじゃねえ。」

『…え?』


跡部は不適に笑い、私に包みを投げた。

開けろ、と目で訴えてきた跡部に従い、封を開けた。

中に入っていたのは購入に躊躇って諦めたキーホルダーだった。

その場に一緒にいてキーホルダーを見ていたわけではないのに私の考えを知ってるなんて…


『なんでこのキーホルダー…』

「おまえはわかりやすいんだよ。バーカ。」


まるですべてを知っている、と言われた気分だった。

まさか今、この瞬間、内心ドキドキしていることも知っているのかな?


「(素直じゃないのは愛嬌の内、)」





透けている心
インサイト、ここにありって感じだな





** END **
#2008.2.20

NO.270000
香岡さまへ



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