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lullaby voice


食卓テーブルにうつ伏せて、一人の人間を帰りを待つ女の姿があった。

彼女は時たま時計を見てはため息をついた。

眠い目を擦り、携帯が鳴るのを今か今かと待っている。

旦那は仕事のために出張に行っていて、今日帰ると聞いたがあまりに帰りが遅いために心配しているようだ。


『…まだかな〜』


時刻はすでに0時を回っている。

限界に達しているであろう彼女は瞼が閉じきってしまうのを拒んでいた。

その時だ。

玄関の鍵がカチャリと音を立てた。

それにいち早く反応するものの、睡魔に襲われている彼女は動けなかった。

ただ、愛しい彼の姿が視界に入ることを願っていた。


「あらま。明良、起きとったん?寝てると思ったわ。」

『おかえりー侑士ー』

「遅なるから寝とき、ってメールしたやん?」


夫である侑士は明良を気遣ってそう言っていた。

しかし、3日も愛する人の姿を見ていないともなれば恋しく思うはず。

翌朝、彼の帰宅を確認するよりも侑士を帰宅時に迎えることを選んだのだ。

そう、だから明良は睡魔と戦っていた。


「悪い。待っててくれたのに酷い言い種(ぐさ)やな。ありがとうな?」

『ん、』


髪を撫でられ、気持ちよさそうに目を閉じた彼女を見て愛しさが溢れ、ふと優しい笑いが漏れた。


「明良、明日から一緒にいたるから安心しぃ?」

『うん…』

「ホンマにありがとう。おやすみ、」

『私、…侑士いないと…寝、つけない、の……』

「なんでや?」


明良はその声に返答することはなかった。

安心感から緊張の糸が切れ、眠りについたのだった。


その翌朝、答えが気になる侑士は明良に再度問い訪ねるだろう。

それに対して、彼女は答える。





lullaby voice
あなたの声は私の子守歌なの、と。





** END **
#2008.2.9



あきゅろす。
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