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彼氏合格証書


告白する勇気はなかった。

のりが良い、楽しくて可愛い後輩、って言われるのが怖くて――遠回しに気持ちを伝えたことはある。
このときが来ることはわかってた。



「明良先輩!俺、明良先輩に吊り合う男になりたいっス。」

『いきなりどうしたの?』

「明良先輩みたいな美人なら、俺…彼女にしたいっス。それにはまず、自分を磨かないとっしょ?」

『美人じゃないけどね?でも、自分を磨くのは良いことだね。』

「うぃっス。」

『頑張って?赤也が格好良くなるの今から楽しみだよ、』


去年の夏、先輩にそう伝えてから時間はあまりなかった。

一緒に過ごせるときはわずかで今年に入ってからは毎日カレンダーを見て、卒業式までの日にちを数えてた。

卒業する先輩たちを見送るのは在校生の務めなのはわかってるけど、明良先輩には卒業してほしくないんだ。


「まだ、ちゃんと告白…してねぇし、」


カウントダウンできる日にちはなくなり、卒業式を明日に控えてしまった。

うかうかしてると高校へあがった瞬間、違う男にさらわれそうだ。


「明良先輩ならモテそう…」


考えれば考えるほど辛い。

俺、これから1年、部活帰りとかいう理由で明良先輩の隣歩くことねぇし。

なにかつなぎ止めておきたかった。


卒業式当日。

式を終えた俺は幸村元部長から受け取った鍵で初めて部室を空けた。

その理由が部長としてではないなんて、良いのだろうか。


「……明良先輩、」


マネージャーを務めた先輩にはやっぱり部室で告白したかった。

俺はテニスを通して明良先輩と知り合えたから。

よく二人で笑ったこの部室で。


『赤也いるー?』

「卒業だからみんなと話したいっスよね。なのに呼び出しとかすいません。」

『平気。どうしたの?』


快く笑って応じてくれる明良先輩に毎日会えなくなると思うと胸が苦しくなった。


「俺、……なれました?」

『え?』

「明良先輩に吊り合うくらい格好良くなりました?」


俺の真剣な表情を見て、明良先輩は笑った。

俺はその理由がわからず、首を傾げた。

満足すると先輩はごめんと謝り、一呼吸おいてから口を開いた。


『私が好きになった時よりずっとね?』


少し照れながら笑う先輩を無性に抱きしめたくなった。

だから抱きしめた。


「言い忘れました。」

『なにを?』

「卒業おめでとうございます!」

『あ、さては〜言うつもり更々なかったでしょ?』

「んなことないっスよー!」


明良先輩が立海大附属中等部生活、最後に訪れたこの部室で笑ってくれてよかった。


『赤也からの告白2回目だな…』

「へ?」

『赤也が部室で昼寝してたときに寝言で言ってたの。明良先輩は俺のだー!って、』

「……」

『誰からの告白より嬉しかったよ、赤也。』


明良先輩が高校に上がっても俺は幸せだろう。

だって、言ったもんな?

明良先輩に吊り合うくらい俺は格好良くなったって、先輩本人が。





彼氏合格証書
手書きでいいんで俺に合格証書ください!





**END **
#2008.2.2


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