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恋はすぐそこに


“同じクラス”

それだけで俺はほかの連中より早苗明良に近いはず。

だけど、女にどう声をかければいいかわからず…ずっと見ていた。いや、見ているしかできなかった。

誰かに相談すれば、ちゃかされると思っていたのも原因だろう。


「最近、いいと思う女がいてのう。」

「へー?仁王先輩にしちゃあ珍しいっスね?女に興味持つとか…相手だれっスか?」

「早苗明良って言うおなごなん。近いうちに告白してみようかねぇ。」

「えぇ!?」


しかし、ライバル(かなり手強い)出現によってちんたらしていられなくなった。

仁王と赤也の会話を聞いてしまっとから数日後―学校の裏庭で仁王と早苗を見かけてから怖くなった。

笑っている早苗と仁王。

見れば見るほどお似合いで自分が失恋したことを悟った。


「ブンの顔、傑作じゃな。」

「趣味悪いっスよ、」

「ちょいと背中を押してやっただけじゃけ。奥手のブンのために、」

「(柄でもねぇのに…)」

「なにか言うたかのう?」

「なんでもないっス!」


その時はヤツの術中にはまっているとも知らず、情けない面をしていただろう。

俺がまんまと仁王の策に引っかかっていたと知ったのは後のこと。


「移動教室とかダルいっつの。」


裏庭での二人を見てから完全にやる気を殺(そ)いでしまっていた俺は毎日気持ち、だらけていた。

前まで、勉強は苦手ではなかったけど一連の出来事で苦手の域に達した気がした。

同じクラスだから早苗とはイヤでも会うし、仁王とのツーショットが多い。


「限界かも、」


初めての恋は実らないって言うジンクスは本当なんだな、としみじみ感じていた時だ。

下も見ずに歩いていた俺はなにかを踏んで滑って転けた。


「チッ!ついてなさ過ぎだろぃ!!」


やけくそになっていたせいで一人でキレてても恥ずかしいとは思わなかった。

転倒時にぶつけた膝をさすりながら立ち上がり、自分が踏んだものを見た。

それは可愛らしい封筒だった。


「誰のだよ…」


見てしまった以上、見ぬ振りなど出来ずに俺はそれを拾い上げた。

表には自分の名前が――


「…なんで俺宛?名前ねぇし。つか、なんのために?」


正面からすごい勢いで早苗が走ってきたのは疑問だらけの手紙を俺が開封しようとしたその時だった。


『見ないで!!』


手紙を奪われて不機嫌になる俺。

目の前で恥ずかしそうにしている早苗の理由さえわからなかった。


「俺宛なんだから見たっていいだろぃ?それになんで早苗が止めんだよ?」

『その…えっと、』

「……もしかして、その手紙、早苗のなのか?」


なにも答えなかったけど、雰囲気からするとそうだった。

内容が気になった俺は手を差し出して言った。


「なら、尚更。見せろよ。」

『だっ…て…』

「気になるだろうが。早苗からの手紙とか。」

『丸井くんならたくさんもらうでしょ?それに迷惑だろうし、』


後込みしている早苗から無理矢理奪って見るわけにはいかない。

しかし、次の授業が始まるまで時間はないため、ちんたらしていられない。

折角二人きりなんだから邪魔が入らないけとを願った。


「早苗からの手紙なら迷惑なんか思わねぇし。」

『どうして?』

「……好きな女がくれるものなら、ゴミだって嬉しいんだよ。」


そう言ってしまって後悔した。

だって、早苗は仁王と――


『丸井くん。…私、手紙書いたんだけど口で言うよ。』


早苗の言葉に体が強ばった。

なにを言われるか内心ビクビクしていた。


『私、丸井くんが好き。』


勝手に体が動いた。

許可もなしに腕を伸ばし、彼女を抱きしめた。

不幸のどん底にいた俺はたった10分で幸せを感じ、人生が逆転したのだった。


「悪ぃ、つい…嬉しくってよ?で、この手紙だけど。部室のロッカーに貼っていい?」

『そ!それはダメ!』

「つーか今、早苗は俺の彼女になったわけだから〜」





恋はすぐそこに
名前で呼び合いてぇな!





** END **
#2008.1.19

NO.2444442
岡野ぺこ様



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