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窓に咲いた恋


俺だってバカじゃなか。

おまえさんが好きな奴くらいちゃんと知っている。

それはいつも俺が明良を見ていて、その先の視線に気付いたから。


「幸村か…こりゃあ苦労しそうじゃ。ハードル高すぎ。」

『うるさいなぁ。好きになっちゃったんだから仕方ないじゃん。』


胸を張って幸村が好きだと言う明良。

俺ん気持ちを直接俺から聞いた訳じゃないから真実を知らないと言うものの、鈍感すぎやしないか?

その発言で俺が傷ついたなんて明良は思いもしないだろう。

今、俺ん胸には鋭利なナイフ、それも抜けないくらい深く刺さった。

残酷じゃよ、おまえさん。


「ま、頑張りんしゃいよ。明良がクラッシュするん見といちゃるけえ。」

『んもー!クラッシュするとは限らないでしょ?雅治のバカ!』


雅治と明良、とお互い名前を呼び合う仲。

それなのにおまえさんは“雅治”より遠い存在の“幸村くん”を選ぶん?


『じゃあね、雅治。また明日ー!』

「あぁ。転びなさんなよ?」

『うぃース!』


帰り道、明良の家の前を通る俺はいつも彼女と帰路に就いた。

その最中(さなか)、あの子供臭い無邪気な笑顔を見れるのは俺だけだった。

なのに……


「ははっ、焦って余裕ない男っちゅーんはみっともなかね。」


もしかすると幸村にその笑顔を含むすべてを持ってかれるかもしれないと思うと胸が苦しかった。

このままでは俺たちの関係は進展しない。

それならいっそのこと……


「賭けてみる?」


と、自分に問いかけた。

ゆっくりと口から吐き出された吐息は真っ白になってから空気中に溶けた。

寒さを実感してから明良ん家に向かった。

彼女の部屋は幸い一階。

それを利用してみようと思うた。


「……情けないのう、」


窓に息をかけてすぐに文字を書いた。

しかし、それに自分の名前を書くことは出来なかった。


「明日の反応見ますか、」


俺は吐息をかけた部分が凍ったのを見て、その場を去った。

そして、翌朝まで待った。


『雅治ー!』

「おう、おはようさん。」

『聞いてよ!今朝、窓にラブレターがあったの!』

「へー?」


体験したことがない経験に目を輝かせながら話をする明良。

“魔法使いからの告白かも”“ロマンチック”などと言っていた。

嬉しそうにして話をしてくれていた明良は急に俺の前に回り込んで指を指しだした。


『嬉しかったよ、雅治!』

「!」


差し出していた指で鼻をつつかれた。

なんであの窓の奴の犯人が俺だとわかったのか。


『幸村くんにはなにかお礼しなきゃな〜』

「(まさか、ハメられた?)」


彼女の発言からするとどうやら俺は明良の思い通りに行動したらしい。

明良を見る眼力が足りなかったか。


『それにしても、予想外の告白だったからびっくりしたー』


控えめに明良が俺ん制服の袖を摘んだもんだから、彼女の手を握らざるを得なかった。

なんて、言い方は逃げてるみたいでずるい言い方かもしれんのう。





窓に咲いた恋
その手紙がずっと溶けなければいいな





** END **
#2008.1.9


あきゅろす。
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