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人魚姫


好きなのに結ばれない、あなたと私。

こんなつらい思いをするなら、生まれてこなければ良かった。


「……結婚するんじゃてな?」

『うん、』

「なんて言えばいいんかのう?」


ふつうなら祝福の一言でも言うのだろう。

でも、私はうれしく思えない。


「俺以外の奴に愛されてもおまえさんは幸せになれんじゃろに、」


笑いながら雅治は言ったけど、その笑みは力なく。

すぐに空虚と化した。


「てか、幸せになれたら破壊的奇跡じゃのう。」

『ホント、雅治なしで幸せになれたら怖いね。』


雅治。

私はあなたがいないと幸せになれない。

それぐらい愛してる。


『幸せになれないくらいなら…死んだ方がまし。』


心底思うことを言えば頬を叩かれた。


「バカ言いなさんな。おまえが居らんくなったら!…居らんくなったら、」


苦しそうに顔を歪めている雅治を見るとなにも言えなくなった。

でも、雅治がいないのに幸せになることはできないのだから、死んだ方がましだと思ったのは本当。


『ごめん、』

「明良が居なくなるなら、俺も生きてる意味がないじゃろう。」


二度と会えないかもしれない。

それでもそうだと言える?


『雅治…』

「まさか、横から持ってかれるとは思うとらんかった。」

『ごめん、』

「謝りなさんな。この世界は愛より金がものを言うんじゃ。俺は明良の旦那さんより金がないからのう。」


そう切ない声を上げないで?

抱きしめられると心臓が縮まる。


「愛がある点では負けんのじゃけど。」

『それは一番知ってる。』


違う人のものになるくらいなら…

私はそう思うの。


幸せになれず、つらい思いをするだけなんてまるで人魚姫みたい。

あまりに苦しい思いをしてるから考え方が消極的になっているのかも。





人魚姫
いっそ、二人で泡になりたい





** END **
#2008.1.4



あきゅろす。
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