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最初で最後の恋


『およめさんにしてくれる?』

「おおきくなったらな?」

『それっていつ?』

「そうだなぁー…」


あの日の約束なんか、彼は覚えてないだろう。

きっと、淡い記憶として頭の片隅にあるくらい。

ロマンティックな再会を夢見てた私はバカ?




あれから10年の月日が流れ、私は帰国子女なんてくすぐったい響きを耳にし、渡米する前にいた氷帝学園に転入という形で戻ってきた。

この日、高等部へと成長した彼に会うことをなにより楽しみにしていた。


『景ちゃん!!』

「あん?俺様を景ちゃんなんて呼びやがるヤツは誰――ッ!!」


昔と変わらない背格好を見て彼だと確信し、昔みたいに背中に飛びついて目隠しした。


『さぁ、誰でしょう?(笑)』

「明良?本当に明良なのか?」

『本当に、』


ストンと背中から飛び降り、景ちゃんの前に回り込んだ。

彼は私を見て戸惑っていた。


『久しぶり!』

「そ、だよな……なんか久しぶりすぎて――」


言葉を詰まらせた景ちゃんの代わりに私が口を開いた。


『そんな顔しないでよ。帰ってこない方がよかった?』

「ちが…!」


彼はすぐに否定すると同時に頬がうっすら色づいた。


「明良、俺がこの10年。どれだけおまえの帰りを待ちわびていたか知らねぇだろ。」

『知らないけど、私だってはやく帰ってきたかったもん。』


私は10年間の距離を感じさせないように必死に笑顔で接した。


「可愛くなりやがって…」

『ありがとう(笑)景ちゃんも格好良くなったね?』

「当たり前だろ。」

『かなりモテるんだろうなぁ〜』


考えただけで嫌な現実から目を背けるため、笑いながら私は景ちゃんの隣を通り抜けた。

しかし、不意に腕を捕まれ、足を止めざるを得なかった。


「なんでそんな辛そうな顔で笑うんだよ。」


あぁ、彼にはいつもかなわないんだ――と感じた。

それは昔も、今も、きっとこれからも。


『この10年間、景ちゃんがどんな風に生活してきて、どんな恋愛をしてきたか……私にはわからない。』

「……………」

『だから、寂しかったの――』


そう言った後だった。

グッと握られた腕に痛みが走ったのは。


「ふざけんなよ、」


さっきとは違う――低く、身を震わすような声。


「どんな恋愛だぁ?それは明良自身が知ってんだろうがバーカ!」


そう言った彼は私の手を優しく握り、歩きだした。

繋いでくれた手は汗をかきそうなくらい熱く、相手に聞こえそうなくらいドキドキ言ってる心臓は昔と変わらない。

違うことといえば――


『景ちゃん、大好き。』

「ふん、バーカ。俺は昔と変わらず今も明良が好きだぜ?」

『どれぐらい?』

「そうだなー…あと10年以内に明良の苗字が変わるくらい。」

『……バカ、』


あの頃より、うんと成長した私と彼の会話がより現実的になったことかな――?





最初で最後の恋
俺は一瞬たりともおまえとあの約束を忘れたことなんかねぇんだよ





** END **

2007.6.9
企画(七色魔法瓶)提出作品



あきゅろす。
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