[携帯モード] [URL送信]
初めての彼女には


お腹が腹痛で痛い。

私ってば、もはや日本語すらヤバい状態?――…いや、いつもか。

あまりの痛さに女だけに生理があるなんてズルイと思う。





さっきからうるさいくらいに携帯が鳴っている。

(ただでさえイライラしてるのに、)

今までは痛くて動けなかったけど、少し余裕が出来てやっとの思いで携帯に手が届いた。


『もしもしー?』

「明良か?」

『う、ん。』

「なんで今日学校来なかったんだ?あーん?」

『痛くて動けなかった。』

「なに!?今行くから!」


なにを悟ったのか知らないが、彼氏はすぐに電話を切ってしまった。

いちいち動きたくなくて、終話後も携帯を握り続けた。


それからしばらくしてからだ。


「明良!!」

『開いてるー…』


返事をする前に部屋のドアを開ける景吾。

お母さんが部屋に通したのだろうけど、ふつうはノックくらいするだろう!…なんて突っ込む気力もない。


「大丈夫か!?」

『大丈夫じゃない。』


半泣き状態の私を見てただ事ではないと感じたのか、景吾は二つ折りの携帯を開くとピピポと効果音が鳴る。


『ちょ、なにしてんの?』

「救急車呼ぶんだよ、」

『や、ちょっ!なんてことすんの!?』


枕を思い切り景吾に投げつける。


「なにしやがる!!」


怒る景吾に病院行くほどじゃない、と説得するのは時間を要した。

こんな時に喋らせないでよ。


「で、何が痛いんだよ?」

『おなか。』

「………はっ?腹?」


景吾が頭に疑問符を浮かべていのは一目瞭然。

まさか、という疑いの目で見られた。


「変なもん拾って食ったんだろ。」

『んな…わけないじゃん、バカ。』

「バカとはなんだ!」


急に下っ腹に激痛が走るとなんとか耐えようと体を縮めた。

額に汗が滲む。


「それ、原因わかってんのか?」


言えるわけがない。

そういうときこそインサイトで察してほしいものだ。


「やっぱ病院に行った方がいんじゃねーか?」

『行かない、』

「あ〜ん?変な病気だったらどうすんだよ!?」


口調が荒い。

まるで説教されている気分だ。

しかし、気づいた。心配そうに様子をうかがっていることに。

だから、こんな時に恥ずかしがってる場合じゃないと思った。


『……生理痛なの。』


それを聞いた景吾の口がポカーンと開く。可哀相なくらいアホ面だ。

次の瞬間、私を呆れている。


「んなことで休むなよ、バカ。」


それを聞いて涙があふれ出した。

これがどれだけ痛いかわからないのだから仕方ないが悲しかった。


『景吾なんか嫌い!もう帰って!』


手元にあるものすべてを投げつけた。

目覚まし時計、抱き枕、ティッシュ、雑誌、鎮痛剤、コップなどなど。


「チッ、んなこと言うな…悪かったから。」


少し反省したのか、景吾は落ち着かせるために優しく私の髪を撫でた。

反省しないといけないのは私の方なのに。

ごめんと言いかけたときに景吾が口を開いた。


「俺にはわかんねー痛さなんだろうな?それどれぐらい続くんだ?」

『私の場合、この激痛に耐えなくてはいけないのは1日だけ、』

「人によって違うのか?」

『違うね。』


彼は床に落ちている薬とコップを見て口を開いた。


「鎮痛剤は?」

『効かない。』

「あん?相当、厄介なもんだな。」


景吾は私の手を握って額にキスをした。


「もう大丈夫だ。俺がここにいるから、」

『……ありがと。』


痛さで涙が流れてるのか、嬉しさから流れるのか正直わからなかった。


「んなに泣くなよな。」


私の頬を伝う涙を手で拭って、優しく瞼に唇が落とされる。


『景吾ー…』

「あん?」

『ごめんね?ありがとう?』

「ありがとうはさっきも聞いた。」


ツンとそっぽ向いた景吾は少し照れているようだった。


「初めて出来た彼女だからわからなくてよ…悪かったな?」


そう言うと、唇を重ねてきた。

片手で手を握ってくれて、空いてる手でお腹を撫で、たまに頭も撫でてくれた。


私はツンツンしてるのに時たま優しい景吾が大好きなのだ。


今まで一人で苦しんでいた生理痛も、これからは景吾がいるから安心。

たとえ痛くても、耐えられそうだ。

“二人は一人に勝る”ってよく言うじゃない?





初めての彼女には
ありがとう、景吾





** END **
#2006.5.16



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!