[携帯モード] [URL送信]
残酷な運命


ずっとあなたが好きだった。

あなたを思うこの気持ちに嘘はない。

だけど、あなたを思えば思うほど辛くなる。


「バカみてぇだが、俺は明良と出会えたのは運命だと信じてたぜ?」

『私だって運命だって信じてた。』


愛し合えた日々は鮮やかで見るものすべてが美しく見えた。

その時間は消えはしない。

しかし、嘘のように時が過ぎていくとすべてが色あせた。

その愛し合っていた時間さえ、セピア色に化していった。


「例え、明良に夫がいても関係ねぇよ。俺はおまえを愛してるんだ。」

『うん、』


親の都合で引き離された私たち。

今では互いに配偶者がいる立場となっていた。


「明良、俺がおまえに会えるとすれば闇に紛れることができる夜だけだ。」

『会いに来てくれるの?でも、もし見つかったら…』

「んなこと心配すんなよ。」


彼―景吾が来てくれるのを毎日、切に待ち望んだ。

夫が眠りについたのを確認して布団から抜け出し、一階のいつもの窓辺に向かった。

窓を開ければたいてい景吾はいる。


「旦那は寝たのか?」

『うん、』

「なら来いよ。」


窓辺にいる私に手を差し伸べる景吾。

私は彼に手を伸ばした。

時間は限られるけど、窓から誘うあなたに身を任せれば、私はどこにだって行ける。

まるであなたはピーターパン。


「どこに行きたい?」

『景吾とならどこでもいい。』

「いつもそう言うよな。」

『景吾といることが大切なの。』


窓から身を乗り出し、景吾がさらってくれた。

このままどこか遠くへ行ければいいのに。


『帰りたくない、』

「……」

『帰りたくないよ景吾!』


これはいつものパターン。

彼の腕の中から出たくなくて泣いてしまう。


「時間が止まればいいのにな。」


その度に彼はそう言う。

あなたのその声、温もり、香り、すべてを私のものにできる。

彼には妻が、私には夫がいる―つまり私たちは互いに他人のもの同士。


『景吾じゃなきゃイヤ。景吾じゃなきゃなの!あの人に触られるだけで…』

「俺だって明良以外の女を抱きたくはねぇよ。」

『景吾と幸せになれないなら死にたい!』

「……明良、」


なんども考える。

なんでこんな結末になったのだろうと。

思い合っていても幸せになれない場合だってあるのね。





残酷な運命
いつもあなたを困らせる私も残酷





** END **
#2007.12.25



あきゅろす。
無料HPエムペ!