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滴る雨、それとも涙?


久しぶりのデートだった。

なのに、彼は大遅刻してきた。


「明良、悪い!」


昨日、アメリカからいきなり電話してきて、急なデートの約束を取り付けたのは景吾。

私はわざわざ有休をもらってまで仕事を休んでデートに望んだ。

なのに景吾は2時間も遅刻。

途中から降り始めた雨により、1時間も雨に打たれ続けびしょ濡れ。


「明良…おまえ2時間くらい待ってたんだろ?」

「俺の家に来るか?」

「風邪引いちまう。」


そう私を促すが私は完全に切れていた。


『帰る!!もう知らないんだから!』

「明良!?」


景吾とその場で別れ、私は自宅に向けて歩き出す。

追いかけてくる景吾を無視し、人混みに紛れ、行方を眩ませた。

それを―――


「なんやそれぇ!(笑)」

『笑わないでよ侑士!』


学生時代からの友達である忍足に電話でグチった。


『信じられない!アメリカからやっと戻ってきたらこれだもん!』

「跡部もいろいろあるんやて。」

『だって1ヶ月ぶりに会うんだよ!?』

「あーぁ、跡部も災難やな。折角、決心して反対を押し切ってまで帰ってきたのに。まぁ、よう話し合うことやな。」


そう言われ、話が全く見えなくて疑問符が浮かんだ。

忍足と電話を終えると窓の外を見た。

景吾と別れてから数時間が経つ。

空は薄暗いまま、携帯の電源は切ったまま、私の心は晴れないまま。


“だって、景吾が悪いんだもん”


そう思って視線を道路に向けたときだった。


『うそ、いつから!?』


正面の家の塀にもたれ、俯いたまま立っている人物がいた。

私はさっきまで怒ってたのに、そんなことも忘れてカサを持って飛び出した。


『景吾なにしてんの!』

「出てくんの遅ぇんだよバカ。」

『いつからいるの!?』

「あれからずっと。」

『……なにバカなことしてんの!早く帰ればいいのに!』

「帰ればいいだぁ!?あのままの状態をほっといたら!………ほっといたら、」


景吾は言葉を濁した。

確かに、あのままだったらいつまでたっても私は景吾に会う気になれなかっただろう。


「それに、今日遅れたのには理由があったんだ。」

『理由……?』


そういえば、珍しく私は景吾から遅刻の理由を聞かなかった。


「飛行機の離着陸がかなり遅れて、さらにこれ取りに行ってたから遅くなっちまったんだ。」

『ッ、』

「もちろん許してくれるよな?」


差し出されたのは他でもない、シルバーリングだ。


「……明良、俺は明良と生きてきてぇんだんだ。だからついてこい。」

『…う、そ……だって―――』


忍足の言葉がそのとき浮かんだ。


「明良、結婚しろ。」

『それ、命令じゃん……』

「明良は生まれたときから俺と結婚するって決まってたんだよ。そうだろ?」

『バカぁ、』


溢れてくる涙を堪え、俯いた。

しかし、それを許してはくれず、無理矢理抱き寄せる景吾。

持っていたカサが地面に音を立てて落ちた。


「プッ……明良、おまえ泣いてんだろ。」

『泣、いてない…もん!涙じゃなくて雨が滴ってるの!』

「フッ、可愛すぎんだよバーカ。」





滴る雨、
それとも涙?

もう雨あがってんだろうが





私の心は晴れた―――


** END **
#2007.5.30



あきゅろす。
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