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ナンバーワン!


今、学校では来たらんとする文化祭のネタで持ちきり。

みんなが浮かれている中、――私は文化祭の裏事情までを知る生徒会役員の一人で予算内に収まるよう努めるのが今の課題点――生徒会は忙しく動いていた。


「足りねぇなら俺様が出してやる。」


なんて会長の跡部は言うけど、先生が許さなかった。

授業が終わると生徒会室に直行する毎日で会議は遅くまで行われた。

生徒の希望通りにことを進めると予算内に収まらず、はみ出すことが予想される今日も私は生徒会室に来た。


『失礼しまー…なんだ、跡部。早いじゃん。』

「俺はなんでも一番じゃなきゃ気がすまねぇんだよ。」


誇り高き帝王、跡部景吾。

彼を見ていると私はこんなところでモタついている場合ではないといつも気づかされた。

そんなわけでいつも彼から刺激を受けようと目で追っていたため、なにかの拍子に彼を異性として意識するようになってしまったのだ。


『ところでさぁ?』

「あん?」

『みんな遅くない?』

「……便所にでも行ってんじゃねえか?」

『財閥のご子息が便所だなんてふつう言わないから。』

「じゃあ、トイレか?それともtoilet?」

『発音がいいのがムカつく!』


そう言い、頬を膨らませれば彼が楽しそうに笑った。

瞬時に頬の色が変わるのに気づき、窓際に駆け寄った。


「ところで、明良。」


ふとした瞬間に名前を呼ばれ、心臓が跳ね上がった。

しかし、それによって帯びた熱は瞬間的に下がったのだった。


――ガチャン!


「鍵閉めやがった。」


冷静にそう言うとドアを見る跡部。

私はこれからどうすればいいのか分からず、途方に暮れた。

内側から鍵を開ける場合、生徒会室のみ鍵を必要とした。


あれから1時間が経過しようとしていた。

ただ、跡部はパソコンに向かい資料とパソコンを交互に見ていた。

そして、時たま私の様子を窺うように見る視線にドキッとした。


「……なに見てやがる。」

『跡部が羨ましい。』

「どういう意味だ?」

『その美貌で多くの女の人を落とせるから。』

「男みたいなこと言ってんじゃねぇよ。」


フッと鼻で笑うと再び彼は資料を見た。


「例えその美貌で多くの女を落とせたとしても、そいつらはカスだ。」


跡部の発言で頭に血が上るという言葉の意味を理解できた気がした。

人をカス呼ばわりするような人だと思わなかったのだ。


『女をカスとしか見てないの!?信じらんない!もっとマシな奴だと思ってたのに見損なった!!』

「おい、落ち着けって。」

『じゃあ、なに!?跡部を好きな私はカスなわけ!?』


そう一気に言い切った時には息が上がってた。

なぜか驚いている跡部を見て、私は自分の失態に気づく。

しかし、跡部がそのことに関してなにも言わなかったから余計胸が痛んだ。

しばらくしてから跡部が立ち上がり、資料を鞄に詰め始めた。


「誰も明良がカスなんて言ってねぇだろ?」

『……え?』

「俺が言いたかったのは…俺が本当に落としたい女は一人、ってことだ。」

『な、んだ…そうなんだ。』


文化祭を前にふられるんだと目をギュッと閉じて覚悟した。


「今、落とせたようだがな。」


しかし、予想とは違う答えで驚いた。


「さて、終わったことだし。帰るか。」


そう言い、鍵が掛かってるのに彼はドアに向けて歩いていく。

胸ポケットから一本のキーを取り出し、鍵穴にさした。

ガチャンと金属音がすると扉に手をかけ、何事もなかったかのようにドアを開けた跡部に唖然とした。


「帰らねぇのか?」

『なんで鍵……』

「俺は生徒会長という理由で鍵を預けられてんだよ。」

『だったらなんでもっと早く…!』


言い終わる前に手が熱を帯びた。

握られたのだ。


「なんで?そんなの決まってんだろ。」


口元で笑うと彼は歩き始め、私は引っ張られて歩く形になった。


「明良ともう少し一緒にいたかったからだ。」

そう言われたから、手だけじゃなくて顔まで熱を帯びた。


「ところで、さっきも聞こうとしたがなんで生徒会室に来た?」

『え?だって会議…』

「昨日、職員会議があるから生徒会は明日はなしって話、聞かなかったのか?」

『……聞いてないし!!』

「クククッ、それで“みんな遅くない?”って聞いたのか。」

『うるさいなぁ!』


この日、手を繋いで笑いながら歩くことが私たちの一番初めの思い出となった。





ナンバーワン!
君の“一番好き”も俺のもの





** END **
#2007.7.24

NO.11111
響へ



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