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恋敵はキュートボーイ


「明良、帰ろうぜ?」


夕方なのに涼しくもない空気をかき分け、帰路に就いた。


「そういや、明良。今日、単元テスト返ってきたんだろ?何点だった〜?」

『岳人が教えてくれたら教えたげる!』

「えーマジで?仕方ねぇーな。俺が点数高くても恨みっこなしだぜ?」

『いいよ〜?今回は自信あるもん!』


同時に鞄の中を漁り、二人でテストを引っ張りだしたが俺は自分のテストを見てピタリと動きを止めた。


「あ、やっぱり“せーの”がいくね?」

『しょうがないなぁ。』

「『せーの!』」


その合図をきに、テストを二人で見せあっこするのはいつものこと。


『87点、』

「85点、」

『やったぁー!』

「クソクソぉ!かなり頑張ったのに!」

『岳人もまだまだだね♪』


上機嫌で先へ先へと歩いていく明良に後ろから言う。


「でも次は負けねぇよ、」

『さぁ、どうだろう?』

「俺だって負けっぱなしにはならねぇもん!」

『ん、あー!』


子供のように何かを見て指を指した。

それに対し、指を指しちゃいけません、なんて親みたいなことを言った。


『アイスクリームの看板発見!いいなぁ、食べたい。』

「食べれば?」

『岳人も食べようよ〜!』

「仕方ねぇな〜。」


仕方ねぇ、とか言いながらも気持ち喜んでいる俺。

だって、明良といられる時間が少しでも長くなるんだもんな。

満足げに二人で同じアイスを食べていると明良が口を開いた。


『そういえば、岳人っていっちょ前に好きな人いるんだって?』

「ッ、げほっ、げほっ!……んな話、誰から聞いたんだよ!?」

『跡部、』


明日会ったら一番に殴ってやろうと心に定めた。

つか、いっちょ前に、って失礼じゃね?


『だれ?同じクラスの子?』

「あー…違うクラス。明良は好きな人いんの?」

『――うん、』


あーあ、顔赤らめちゃって。

どうせ、明良のことだから侑士とかなんだろうな。

羨ましい。


「せーの、で言う?」

『好きな人?』

「うん、」

『それは…ちょっと――』

「だよな、」


言葉を濁した明良を横目に俺は苦笑した。

だからって、怯(ひる)まないし容赦はしない。


「でも、これは強制!」

『えー!?』

「せーの、」


一瞬、違う女の名前でも適当に言おうか考えた。

相手が幼なじみな場合、告白するのはかなり怖いもの。

でも、自分に嘘はつけなかった。

ずっと共に過ごしてきた日々がセピア色に色あせ、消えかけたとしても。


『岳人!』
「明良!」


やけくそになり、半ば叫んだ。

結果から恥ずかしさがこみ上げてくるも、初めて同じ答えになったことに嬉しさも感じた。

いつまでも俺は子供っぽいと明良が言うから、子供っぽさを演じていた。

それが恋敵となっていたことに気づくのは――


「……ヤベ、暑いー!!アイスもう一個食うー!!」

『ズ、ズルい!私も食べる!!』


追加で買ったアイスが二人の顔の火照りを冷ました頃だろう。




恋敵は
キュートボーイ

明日から冗談でも跡部を殴れねぇな





** END **
#2007.7.4


NO.7000
あいりさまへ



あきゅろす。
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