ロクな恋愛観じゃない。 「最低!」 そう言われて女に頬をぶたれたことは数しれず。 ひどいときなんかは店にいるときにコップの水ぶっかけられた。 「最低、ね……俺、詐欺師じゃしな?じゃけ、その称号は最高に痛いのう。」 そんな男がある日あった女に真剣になったんよ。 信じられるか? あれは高校に上がり、学校である女に追いかけ回されていた時じゃ。 相手は女というものの中学では陸上部のエースだった。 そのため、走っても差がなかなか開かない。 「最低男…!」 「(マズいのう、)」 不慣れな校舎の中を無闇に走れないが走るしかない。 ある曲がり角を曲がった時だ。 「行き止まり…!」 「雅治ー!!」 「チッ、」 追っ手が近づいていてさらに逃げ場がないならば仕方ないと窓を開けた。 その時だ。 すごい勢いで腕を引かれ、狭い箱の中に閉じこめられた。 臭いでそれが掃除道具が入るロッカーだと理解した。 ついに追っ手に追いつかれた。 殴られる覚悟はしていたができれば痛いのは避けたい。 「すいません!ここに人来ませんでした?」 『窓を開けてそこから逃げたわ。』 「こんな縁(へり)を歩いて」 『ずいぶん身軽な人なのね?見てたら隣の木に飛び移って裏庭に逃げていったわ。』 「チッ、逃がしたか。」 女は俺を助けてくれた人の言葉を信じて去っていった。 会話からすればそれが俺らの先輩に当たると理解し、扉を開けた。 『彼女、行ったわよ。』 「……お世話かけました。」 『女は大切にしなさい。痛い思いするのは目に見えてるならね、』 それとだけ言うと掃除の最中だったらしく、ちりとりでゴミをすくっていた。 俺に見向きもせずに手を動かす先輩をじっと見た。 ふと彼女の上履きにあった名前を見て口にした。 「先輩の名前、明良って言うん?」 『それがなに?』 「いんや?可愛い名前じゃと思うて、」 『どうも。』 彼女は俺を適当にあしらっていて全く愛想がない。 しかし、自分の名前が可愛いと言われて嫌がる女はいない。 心なしか嬉しそうにしていた。 「嬉しいん?」 『本当に少しね、』 「女はみんなこう言えば喜ぶんじゃけど、」 『私はそこらへんの女みたいになびかないわよ?』 一目惚れだった。 俺に関心がない女を振り向かせることなんか無理に等しいが、手に入れたいと思った。 その横顔が今まで見た女の中で一際、美しく見えたからだ。 「じゃあ俺、これからは明良先輩一筋なるけえ。」 『どうだか、』 「賭けても良いぜよ?」 『悪いけど私、君みたいに女を玩具程度にしかみないような人は嫌いなの。』 あっさりふられた。 しかし、諦める気にはならなかった。 過去の行いが悪かったんじゃの。 ロクな 恋愛観じゃない。 初めからまともな恋愛観を培っておけばよかったのう ** END ** |