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60回も転んだのに


隣で明良先輩が笑ってる。


『赤也ってさ?』

「なんスか?」

『絆創膏が似合うようになったよね。』

「嬉しくもなんともないんすけど、」

『似合わないよりマシじゃない?』


男子テニス部のマネージャーである明良先輩は俺が部活中に怪我する度に傷口を手当してくれる。


『テニスは紳士のスポーツなのに、』

「良いんスよ!このやりかたが俺らしさなんすよ!」

『まぁね、』


余りに怪我する率が他の部員より高いため、テニス部の救急箱は俺専用になりつつある。


『でも、やっぱり怪我しないのが一番だよ。見てて怖いもん、』

「それって心配してくれてんスか?」

『うん。自分の帰り道の心配ね。』

「ひでぇ!俺の心配じゃないんスか!?」

『あーはいはい。赤也も心配です。』

「うわー棒読みー?」


俺は部活が終わってから毎回のように明良先輩に手当してもらっている。

そのため、帰りがみんなより遅くなる。

もちろん責任を持って毎回自宅前まで送り届けている。


「帰り道はちゃんと送ってるんだからいいじゃないスかー!」

『わかったから。今は赤也の心配してます。』

「ちなみになんで?」

『いつか体がボロボロになりそうだもん、』


怪我する度に明良先輩に手当してもえるのが俺の楽しみである。

決してマゾなわけではない。

ただ、二人きりになれるのが、一緒に帰れるのが嬉しい。


「ボロボロにならないように毎回明良先輩が手当してくれてんじゃん。」

『やっぱり、好きな人には怪我とかしてほしくな――』

「え?」

『あ、や、なんでもない。』

「なんでもなくなんかないっス!最後まで聞かしてくださいよー!気になりますって。」


黙り込んで口を開こうとしない明良先輩。
口を尖らせ、明良先輩の両頬を軽く叩いてから言った。


「今まで明良先輩に手当してほしくってわざと怪我してました、つったら笑います?」

『……笑えない、』

「なんでスか?」

『さっきも言ったでしょ?好きな人には怪我して欲しくないって。』

「今、最後まで聞いたんスけどね〜」


嫌みを漏らすとなにか反論しようとする先輩を抱きしめて口を閉じさせた。


「これからは怪我しなくても一緒にいれます?」

『……彼女にしてくれるなら、』

「明良先輩なら喜んで!」





60回も転んだのに
もしかして、もっと早く告れば痛い思いしなくてすんだんじゃね?





** END **



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