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愛したくなる


遠くからパタパタと走る音が聞こえる。

誰かなんてわかりきってる。

その音の主は一人しかいない。


『ブン太くんー!お菓子持ってきたー!』

「おっ、サンキュー!」


男子テニス部のお姫様、ことマネージャーである明良は俺のために菓子をクラスまで持ってきてくれる。

それは嬉しいんだけど、どこか餌付けされてるみたいで微妙な時もある。


『今日はマシュマロなの。』


渡されたマシュマロを口の中にいれれば口の中で溶けていった。

うまいのはうまい。

菓子をくれるのも嬉しい。

だけど明良が俺を餌付けしているように思えて仕方がない。


『おいしい?』

「あ、うん。」

『ブン太くんって他になにが好きなの?』

「他?あー…ゼリーとか?」

『じゃあ、今度はゼリーにしよう。』


彼女の仕草や性格、笑顔は可愛いらしいものがある。

男、特に仁王とかに好かれそうだ、とか思うとなぜかムッとした。


「なぁ、なんで明良は俺にいっつも菓子くれんの?」


特別、仲が良かった訳でもない。

今まではマネージャーとして接することしかなかった。

それなのになぜ急に?


「仲良いわけでもねぇのに、」


冷たく言ったつもりはないが、そういう風にとられても仕方ない言い方だ。

少し反省していると案の定、瞳を潤ませた明良がいた。


『め、いわく?』


声を震わせながら言った言葉と同時に持っていたマシュマロの袋をグシャッと握りしめた。


「いや、迷惑じゃねーけど。急になんでかな?って思ってよ?」

『うん、そうだよね…』

「あ、マジで迷惑じゃねぇからな!明良から貰えた菓子は格別、つうかなんつうか…」


あたふたしながらフォローしていたがうまく言えなくて言葉を詰まらせた。

すると明良は俯き、理由を話してくれた。


『あの、ね?ジャッカルくんが、ブン太くんと仲良くなりたければお菓子をあげれば良いって言ってくれて、』

「ジャッカルが?」

『私、その…ブン太くんと仲良くなりたくて、だから、あの…』


顔を赤くしている彼女を見て自分まで赤くなってしまった。

予想外だった。


「えー…と、それだけの話?」

『え?あ、う、うん。』

「なーんだ。俺、餌付けされてんのかと…いや、ある意味餌付けだけどよ?」


照れ隠しにあれやこれやと言っている俺を見て嬉しそうに笑った明良を見ると胸が締め付けられた。


「じゃあ、さ?その、君付けやめねぇ?ブン太でいいし。」

『なんか、名前で呼び合うなんて恋人同士みたい。なれるまでは恥ずかしいな、』


あぁ、やべーよ俺。

コイツ可愛すぎだし。





愛したくなる
好き、ってことは正しく餌付けされた証拠なのか?





** END **



あきゅろす。
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